研究概要 |
ジメチルアセトアミド(DMAC)は、ポリウレタン繊維の重合用溶剤、樹脂や医薬品などの反応溶剤、洗浄剤として工業的に幅広く使用される溶剤である。従来の許容濃度と同等レベルで肝障害に陥る可能性のあるジメチルアセトアミド(DMAC)について次の2つのことを検討する。1) DMACの代謝に係ることが推察される薬物代謝酵素(CYP2E1)遺伝子に注目し、DMAC曝露によるCYP2E1を介した肝障害発生メカニズムの解明、2) DMAC職域曝露者と非曝露者を比較し、肝障害発生とCYP2E1多型による個体差要因の検証を通じて、DMAC曝露による高危険群の設定を行う。これらの結果を、労働者の安全と健康を維持するためにDMAC曝露による毒性メカニズムを明らかにし、曝露に対する予防方法の確立や許容濃度の再評価、管理濃度の策定を行うための資料として役立てる。H23年度の計画は、1)DMAC2週間吸入曝露による肝障害の発生について、炎症マーカーやその標的遺伝子アポトーシス関連遺伝子、酸化ストレス等について解析を行う。また、DMACの尿中代謝物(曝露のバイオマーカー)を測定する。2)野生型、CYP2E1ノックアウトマウスを用いたDMAC吸入曝露実験を行い、DMACの毒性発現に対するCYP2E1遺伝子の関与を明らかにすると同時に、肝障害などの発生機序を解明する。現時点においての進捗状況としては、野生型マウスを用いDMAC濃度を0,10,25,50,250ppmに設定し、吸入曝露実験を行った。曝露により全ての曝露濃度でCYP2E1-mRNAの誘導が観察された。現在、野生型、CYP2E1ノックアウト型マウスを用いて2週間の吸入曝露実験を実施している。また、曝露終了後、肝臓及び血液サンプルを用い解析を行う予定である。また、これらの解析の準備を行っている。
|