研究概要 |
ジメチルアセトアミド(DMAC)は、樹脂や医薬品等の反応溶剤や洗浄剤として工業的に幅広く使用されている溶剤である。従来の許容濃度と同レベルで肝障害に陥る可能性のあるDMACについて代謝に係ることが推察される薬物代謝酵素(CYP2E1)遺伝子に注目し、DMAC曝露によるCYP2E1を介した毒性メカニズムを明らかにすることを目的とする。 野生型マウスとCYP2E1-null型マウ野生型、CYP2E1 ノックアウトマウスにDMAC 曝露を行い、DMAC により野生型でのみ肝障害が発生し、CYP2E1 ノックアウトマウスで肝障害が発生しない場合、CYP2E1 がこの化学物質の肝障害を第一に決定することになる仮説をもとに野生型マウスとCYP2E1ノックアウトマウスを用いたDMACの2週間吸入曝露実験(0, 10, 25, 50, 250ppm)を実施した。しかし、予想に反して、両遺伝子型でALTの上昇が観察され、組織学的な変化としても小葉中心性の肝細胞肥大、核の大小不同、グリコーゲンの蓄積などの空砲化がDMAC吸入曝露により両遺伝子型で観察された。さらに、CYP2E1ノックアウト型の50ppm、250ppmの曝露群では脂肪変性や巣状壊死も観察された。曝露後の両遺伝子型の尿中のDMACとその代謝物としてNMAC、アセトアミドが検出された。CYP2E1ノックアウト型では野生型マウスに比べNMACは各濃度群で約10倍高く検出されたが、アセトアミドは野生型でCYP2E1ノックアウトマウスの約5倍高く検出された。また、CYP2E1ノックアウト型ではDMACが非常に高い濃度で検出されている。DMACの代謝の多くはCYP2E1を介して行われるが、そのほかの経路も存在する可能性が示唆される。
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