研究課題/領域番号 |
23790683
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩佐 一 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60435716)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 認知機能 / 認知症予防 / 地域高齢者 / 余暇活動 / 因果関係 |
研究概要 |
欧米では、読書やパズルなどの余暇活動を頻繁に行う高齢者は、認知症の発症リスクが低いことが報告されている。本研究は、本邦の地域高齢者における余暇活動と認知機能維持の因果関係を検証することを目的として、平成14年に行ったベースライン調査から10年後の長期追跡調査を実施することを目的とした。本研究の実施によって、地域高齢者における余暇活動と認知機能維持の因果関係について明らかにすることができ、後期高齢者をターゲットとした「生きがい型」認知症予防を今後本邦において強力に推進するために必要な科学的根拠が得られることが期待される。平成23年度は、(1)先行研究の収集・整理、(2)予備的解析結果の公表、(3)追跡調査の準備を中心に活動を行った。 (1)先行研究の収集・整理: 高齢者の余暇活動と認知機能維持に関する先行研究の網羅的レビューを行った。どのような余暇活動が認知症予防により効果が高いのか、余暇活動と認知機能維持の関連の機序、対象を後期高齢者や虚弱な高齢者に絞った場合にどの余暇活動を推奨するべきか等、について先行研究を収集し現在整理中である。収集した知見の一部は、予備的解析論文(後述(2))に記載した。 (2)予備的解析結果の公表: これまでに行った5年間の縦断調査研究の予備的解析結果を論文にまとめ英文誌に発表し受理された(Iwasa H et al. Journal of Psychosomatic Research 2012; 72: 159-164)。趣味を頻繁に行う高齢者は認知機能が維持されやすいことが見出された。一方、社会活動や運動習慣と認知機能維持の関連は見出されなかった。 (3)次年度に実施する追跡調査の準備: ベースラインから10年後の追跡調査(訪問調査)を平成24年度に実施予定である。調査項目の整備、名簿情報の取得・整備、訪問調査員の訓練、等の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「(1)先行研究の収集・整理」は、やや目標達成が遅れている。文献の量が予想以上に多く、整理が遅れているためである。平成23年度中に国内誌にレビュー論文を投稿する予定であったが、もう少し時間を要する見込みである。収集した先行知見の一部は下記「予備的解析結果論文」に活用した。 「(2)予備的解析結果の公表」は、予想よりも大幅に早く目標が達成された。論文審査が予想を上回って順調に進み、年度内に受理・印刷されたためである。類似の知見は国内では希少であるため、今後は当該論文を国内外に宣伝していく予定である。 「(3)次年度に実施する追跡調査の準備」は、概ね順調に進行している。訪問調査の実施時期をいつにするか情勢(調査の効率性、調査対象者の負担等)を見極めつつ検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、地域高齢者における余暇活動と認知機能維持の因果関係を明らかにするために、ベースライン調査から10年後の長期追跡調査を実施する。具体的な活動としては、(1)訪問面接調査の実施、(2)データ入力・解析、(3)調査対象者への結果報告等、(4)成果の公表・提言、を行う。 (1)訪問面接調査の実施: 平成14年実施調査に参加し平成24年にA区に在住する高齢者約500人を対象として訪問面接調査を行う。調査は調査会社に業務委託して行う予定である。調査実施に先立ち、住民基本台帳を閲覧し名簿情報の取得や調査票の印刷、調査員の訓練などを事前に行う予定である。なお調査参加者は400人(参加率80%)を想定している。 (2)データ入力・解析: 追跡調査で得られたデータの入力を業者に業務委託する。データの整理ならびに解析作業を研究協力者(アルバイト)と共に行なう。 (3)調査対象者への結果報告: 結果報告書の小冊子を作成・印刷し対象者宅へ郵送する。 (4)成果の公表・提言: 訪問面接調査の成果をまとめ、海外学会での発表や英文誌への論文発表を行う(アメリカ老年学会(サンディエゴ)に参加予定、Journal of Gerontology誌、American Journal of Geriatric Psychiatry誌に投稿予定)。また、研究成果をふまえ本邦における認知症予防への提言を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
「(1)訪問面接調査の実施」に関して、住民基本台帳閲覧・名簿整備等のアルバイト賃金、調査票・挨拶状印刷業務委託費、対象者宅への挨拶状郵送費、訪問調査業務委託費を支出する予定である。 「(2)データ入力・解析」に関して、データ入力業務委託費、データ整理・解析作業アルバイト賃金を支出する予定である。 「(3)対象者への結果報告」に関して、結果報告書印刷費、冊子郵送費を支出する予定である。 「(4)成果の公表・提言」に関して、学会参加費・旅費、論文作成費を支出する予定である。 その他、文具、パソコンソフト等の消耗品費を随時支出する予定である。
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