本研究を通じて、多くの病院で病院が保有している医療情報を用いたデータを使用して病院の運営決定を行う会議で検討を行っていた。しかし、ほとんどのデータが患者数や手術件数など、特に加工を必要としない実績情報が多く使用されており、実際の病院経営のための意思決定の場面では十分でないと感じていることが分かった。さらに、こうした情報を分析し資料を作成するための専門の部署を有している病院はあまりなく、多くの場合事務部門の中で、一部の限定された人員でルーティーンとして実施されていた。そのため、新たなデータ分析を実施し経営分析などに資する資料を作成するということが実行しづらく、経営会議等で必要と指示された資料の作成で終わっていた。 研究期間中に1病院で情報分析の専門部署が立ち上がり、様ざまな取り組みを実施し始めたが、まだ試行錯誤の状況であり、その部署を管理している者が経営管理の勉強をし、必要なデータの掲示や病院経営への提言をするなどという状況である。今後、こうした経営的なノウハウを部署内で蓄積し、経営を考えられる人材の育成につなげることが次の目標となっていた。 病院内において、経営の意思決定に資するデータ分析を行えるための人材育成やそのための指標の作成などが今後必要となることが本研究を通じて明らかになった。特に、DPCデータなどの診療録データをいかに経営に役立つデータに加工するかという点が重要となるであろう。そのため、DPC研究班などの成果を活用しつつ、病院職員の育成を検討する継続的な調査が必要であると考えた。
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