研究概要 |
目的および背景:諸外国を中心として、糖尿病患者ではうつの有病率が高いことが報告されている。うつ病合併の糖尿病は、QOLが低下し、血糖コントロールの悪化をもたらし、死亡率が1.6倍と高くなる。睡眠呼吸障害は糖尿病に高率に合併しており、睡眠呼吸障害からは日中の眠気だけでなく、うつ症状と類似した自覚症状が出現する可能性がある。日本人2型糖尿病患者におけるうつ症状の有病率を明らかにし、さらに睡眠呼吸障害とうつ症状の関連性について解明することを目的とした。 対象および方法:本研究では糖尿病患者513名の糖尿病患者を対象として、SDS(Self-rating Depression Scale)をうつ症状の指標とし、睡眠呼吸障害についてはpulsox-3iを用いたスクリーニング検査を行った。40点以上をうつ症状陽性として、50点以上を重度のうつ症状とした。 結果:糖尿病患者におけるうつ症状は約半数に見られた。対象者のなかでさらに重度のうつ症状(SDS50以上)の合併率は14.8%であった。うつ症状を有する糖尿病例では、年齢が若く、HbA1cが高く、肥満度が高い傾向が見られた。本研究ではうつ症状と睡眠呼吸障害との関連性が見られなかった。糖尿病のうつ症状との関連については名義ロジスティック解析でHbA1c (8%) が多因子で補正後であっても独立した関連因子であった(OR1.22, 95%C.I, 1.01-1.47, p=0.032) 。 結論:睡眠呼吸障害とうつ症状との関連性はあきらかではなかった。血糖の管理状況不良とうつ症状に関連性が見られた。
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