平成24年1月1日~平成25年12月31日までに長崎県において新たに肺結核と診断され、協力同意の得られた保健所または結核病床を有する医療機関に登録された患者を対象に、カルテ、患者登録票を用いて情報収集を行った。男性108例、女性101例、平均年齢は71.5歳±19.8(中央値78歳)であった。年齢層では65歳以上が73.8%、75歳以上でみると61%と高齢者での罹患が目立つことは多報告と同様であったが、塗抹陽性者は126例であった。居住区は保健所管轄別にみると、長崎市80例、佐世保市60例、県南と県北がそれぞれ16例、県央と五島が13例、西彼が7例と続いた。受診契機となった症状では咳が78例、発熱76例、痰51例、全身倦怠感27例、健康診断時24例、定期受診の際17例、体重減少16例、食欲不振16例、呼吸困難・息切れ16例と続いた。他疾患にて入院時または受診時に発見された例もその他には含まれる。 塗抹陽性者について受診の遅れを2ヶ月以上、診断の遅れを1ヶ月以上、およびその発見の遅れを3ヶ月以上として分析を行なった。その結果、64歳以下の受診の遅れは21.7%(5例/23例中)、65歳以上では7.9%(5例/63例中)で有意差は見られなかったものの(p=0.077)、64歳以下群で若干受診の遅れの割合が多かった。一方、診断の遅れを見てみると、64歳以下群で12.5%(3例/24例中)、65歳以上群で32.9%(27例/82例中)と、有意差は見られなかったものの(p=0.051)、65歳以上群で診断が遅れる傾向にあった。発見の遅れについては両群に差は見られなかった結核罹患率の多い長崎においては特に高齢者を診察する場合には他疾患にて受診された場合でも常に結核を念頭に置き、呼吸器症状以外の症状の聴取と積極的な胸部レントゲン撮影は有用と思われる。
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