研究概要 |
本研究は平成23年度より日本人を対象として、尿に含まれるバイオマーカーと循環器疾患との関連を疫学手法を用いて検討してきた。平成25年度も前年に引き続き、平成17年度に行ったスポット尿検査の成績をベースラインとした、スポット尿検査の結果(Na、K、尿素窒素、クレアチニンを測定)と循環器疾患のリスクファクターの関連についての前向きコホート研究(研究1)と平成23~25年度に改めて健康診断と合わせて実施した、スポット尿検査の結果(C-ペプチド(平成23年度のみ)、Na、K、尿素窒素、クレアチニンを測定)と循環器疾患リスクファクターの関連についての横断研究・前向きコホート研究(研究2)を行った。平成24年度に計画したスポット尿と蓄尿検査の関連についての研究は、両検査を同時に実施した人数が少なく中止した。 研究1については、ベースライン時に高血圧・腎機能障害を示さなかった1,890人のうち、追跡調査に参加し、かつ降圧薬治療を受けていなかった891人において、食塩摂取の指標となるスポット尿中Na濃度と長期的な収縮期血圧値の上昇の間に正の関連を認めた。 研究2については、横断研究として、空腹時採血を行った1,117人において、糖尿病罹患者とそうでない者の間のC-ペプチドの推定1日排泄量(スポット尿中C-ペプチド値、クレアチニン値から推定)の比較を行った。分析の結果、糖尿病群では非糖尿病群よりもC-ペプチドの推定1日排泄量が高値であることを認めた。同じく横断研究として、高血圧の治療を受けていない4,386人の間で、食塩摂取の指標となるスポット尿中Na濃度やNa/クレアチニン比と血圧値の関連を分析し、両者の間に正の関連を認めた。前向きコホート研究としては、C-ペプチドの推定1日排泄量とその後のHbA1cの変化について2年間の追跡を実施できた626人のデータを分析したが、C-ペプチドの推定1日排泄量とHbA1cの変化量の間に有意な関連は認めなかった。
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