本研究はハンセン病患者を親に持つ思春期青年のスティグマの性質と付与過程に関する研究を行う。研究期間内には以下のことを明らかにすることを目的としている。1 )患者を親に持つ10代後半の思春期青年の主観的な体験やコーピングを通して、スティグマの様態や性質を明らかにし、どのような過程によって患者の子どもにスティグマが付与されるかを解明する。2)患者を親に持つ子どものコーピング強化のための心理社会的支援や医療サービスの在り方を発達課題に即して検討する。研究参加者は現地のNGOの協力の下、ネパールのハンセン病療養所もしくは寄宿舎に住む、患者を親に持つ13-19歳の思春期青年18名とした。本人がハンセン病の診断を受けていないこと、学校に通学していることを取り込み基準とした。倫理的配慮として本人および保護者の同意を得て実施した。また、本研究は国内およびネパール保健省の下部組織であるNepal health research councilの承認を得て実施した。調査は半構造化面接法で行い、質問内容は、【親の病気を知った時・自覚した時】、【隣人の反応】、【友人の反応】および【現在】とし、各時期における 行動や経験、意見や価値観、気持ち(feeling)、属性や心理社会的背景とした。本研究の参加者の平均年齢は15.5 歳であった。研究参加者の多くは親の病気については児童期(5-9歳)に身体的な特徴から自覚していたことが多かった。一方で、親の病気を自覚しても家庭内での行動変容には影響は与えないことがわかった。
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