研究概要 |
本研究は、1.神戸市民と2.篠山市民を対象にした疫学調査において遂行された。以下、調査ごとに本年度の結果を中心とした研究成果をまとめる。 1.神戸:平成24年度には、平成22年度にベースライン調査を受けた約600名を対象に、追跡調査を実施し、また本研究課題の基礎検討課題として、炎症マーカーと新しい動脈硬化指標であるCAVIとの関連を分析し論文として公表した。本研究では、血中脂肪酸と腎機能の関連が主要検討課題であるが、EPAやDHAなどの脂肪酸が腎機能を保全する仮説のもとが、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)がその抗炎症作用を介して腎機能の悪化を防ぐという説である。論文では、炎症マーカーである高感度CRPは、健診などで評価する循環器疾患危険因子であるLDLコレステロールよりも動脈硬化と関連が強く、炎症が動脈硬化のマーカーとして有用である可能性が示された。これにより、抗炎症作用をもつEPAやDHAなどの脂肪酸が、動脈硬化とも関連が深い腎機能と関連する可能性があると考え、平成22,23年度の1100名のデータで、脂肪酸とシスタチンCにより推定した腎機能との関連を検討した。全脂肪酸におけるEPAやDHAの割合が高いものでは、腎機能が保たれている傾向はみられたが、有意性を示すデータを出すことはできなかった。神戸の対象者は、循環器疾患危険因子をもたない生活習慣も非常に良い集団であり、関連がみられにくいと考えられる。 2.篠山:平成24年度に、675名の特定健診受診者を対象に、1.と同様の脂肪酸と腎機能を測定した。慢性腎臓病のない対象者に限定してEPAやDHAとシスタチンCにより推定した腎機能との関連を検討したところ、EPAやDHAの全脂肪酸における割合が高いほど、有意に腎機能が保たれている結果を得られたため、現在論文投稿作業を進めている。
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