研究課題/領域番号 |
23790717
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
松下 由実 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (50450599)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 疫学 / 糖尿病 |
研究概要 |
近年、糖尿病のような生活習慣に関連する疾患が、経済的発展による生活習慣の劇的な変容にともない、先進国のみならず発展途上国においても社会的重要課題の一つとなってきている。世界保健機構の2002年々次報告では、さらに、今後30年の間に、特にアジアの発展途上国において糖尿病患者の数が劇的に増加することに警告を発しており、糖尿病の予防対策を早期に行わなければならないことは論を待たない。糖尿病の3大合併症(網膜症、腎症、神経障害)の中で、網膜症は比較的早期に現れるといわれている。現在、空腹時血糖値を2回、別の日に測定し糖尿病と判定しているが、米国糖尿病学会(ADA)と国際糖尿病連合(IDF)、欧州糖尿病学会(EASD)によって設置された国際的な専門委員会は、糖尿病診断の新しい診断基準としてHbA1c(1回測定)を採用することを推奨した。HbA1cと糖尿病網膜症の関係は、人種によって異なることが予測され、HbA1cの閾値が日本人でどのくらいの値になるかはまだ明らかにされていない。また、HbA1cは年齢と共に増加すると報告されているが、年齢と共にHbA1cと糖尿病網膜症との関係がどのように変化していくかは、明らかになっていない。そこで、日本人を対象として、糖尿病診断の際の HbA1cの閾値をROC曲線を用いて求め、また、加齢に伴うHbA1c の変化が糖尿病網膜症に及ぼす影響を、経年的に検討することにより、糖尿病診断における HbA1cの有用性の検討を行う。さらに、糖尿病網膜症のない人を前向きに4年間フォローアップすることにより、糖尿病網膜症の新規発症率を求め、HbA1cが上昇する閾値を求める。本研究での成果を既存の報告と比較することにより、人種間での糖代謝の差とその差が糖尿病の合併症(糖尿病網膜症)に及ぼす影響を国際比較し、予防策を打ち出すことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究実績として、1.既存データ(平成11年度~平成20年度)のデータベース化を行った。 1)人間ドックデータ 2)糖尿病・糖尿病網膜症の把握 糖尿病、糖尿病網膜症の既往歴、治療の有無は人間ドックの調査票および欠勤時の診断書より把握した。2.眼底写真の眼科専門医による読影 平成11年度及び平成20年度の人間ドックを両方受診した人を対象に、平成20年度の受診時に撮影した両眼の眼底写真を眼科専門医に依頼し、網膜症国際重症度分類に沿って判定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の計画1.眼底写真の撮影 平成20年度に眼底写真を行った人のうち、糖尿病網膜症のない人にのみ再度両眼の眼底写真撮影を行う。 2.眼底写真のデータ整理、データ入力および統合データベースの作成 眼科専門医により解読した眼底写真のデータをExcelに入力し、統合データベースを作成する。 3.データの解析 1)HbA1cを用い、糖尿病網膜症との関連を性・年齢別に検討する。また、人間ドックを複数回受診した集団(平成11年度と平成20年度に受診した集団)において、HbA1cの経年変化に伴う糖尿病網膜症の影響を縦断的に分析する。さらに何歳の時のHbA1cが糖尿病網膜症と関係しているかを明らかにする。2)糖尿病網膜症を検出する最適なHbA1cを感度・特異度分析により求める。平成25年度の計画1.平成24年度のデータベース化を行う。 1)人間ドックデータ 2)糖尿病・糖尿病網膜症の把握 糖尿病、糖尿病網膜症の既往歴、治療の有無は人間ドックの調査票及び欠勤時の診断書より把握する。2.眼底写真の眼科専門医による読影 平成24年度の受診時に撮影した両眼の眼底写真を独自の画像ソフトで処理し、ハードディスクに保存し、眼科専門医に依頼し、糖尿病網膜症国際重症度分類に沿って判定する。3.眼底写真のデータ整理、データ入力および統合データベースの作成 眼科専門医により解読した眼底写真のデータをExcelに入力し、統合データベースを作成する。4.データの解析 平成20年度の眼底写真で糖尿病網膜症のない人を対象に、前向きに4年間フォローアップすることにより、糖尿病網膜症の新規発症率を求め、HbA1cが上昇する閾値を求める。5.成果発表 国内および国外の糖尿病学会、肥満学会などで研究成果を発表する。また論文としてまとめ、国際誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.消耗品:データ整理および入力、統合データ作成のための消耗品が必要である。2.海外旅費:国際学会発表のため、年1回程度の渡航が必要である。3.国内旅費:研究打ち合わせや調査進捗状況の確認のために国内旅費が必要である。4.謝金:眼底写真の判定に要する費用を謝金として支払う必要がある。さらに、データ整理および入力のためのアルバイト謝金も必要である。
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