研究概要 |
平成20年度の人間ドックを受診した人3340名を対象に、受診時に撮影した両眼の眼底写真を眼科専門医が糖尿病網膜症国際重症度分類に沿って判定を行った。平成20年度に眼底写真撮影を行った人のうち、糖尿病網膜症のなかった人に対し、平成24年度に再度両眼の眼底写真撮影を行い、同様の方法で読影を行った。解析は、HbA1cで8群に分けて行った (HbA1c:<=5.3%, 5.4-5.6 %, 5.7-5.9 %, 6.0-6.2%, 6.3-6.5%, 6.6-6.8%, 6.9-7.1%, >=7.2 %)。 ベースライン時のロジスティック回帰分析による性・年齢を調整した糖尿病網膜症のオッズ比(95%信頼区間)は、HbA1c8群では、それぞれ0.41 (0.05-3.23), 1.00 (ref.), 0.73 (0.32-1.70), 1.16 (0.47-2.84), 1.61 (0.55-4.76), 2.79 (0.75-10.30), 4.71 (1.43-15.57), 5.10 (2.11-12.34)であった。ROC曲線の曲線下面積(SE)は、血糖値とHbA1cでほぼ同等であった(血糖値:0.660 (0.041) 、HbA1c: 0.667 (0.042))。 ベースライン時に糖尿病網膜症のない人(2427人)を対象とし、4年間フォローアップし、糖尿病網膜症の新規発症率を求めた。新規発症率は1.7%であった。ロジスティック回帰分析により、性・年齢を調整した糖尿病網膜症の4年間の新規発症オッズ比(95%信頼区間)は、HbA1c8群では、1.58 (0.32-7.93), 1.00 (ref.), 0.80 (0.26-2.50), 1.77 (0.56-5.58), 3.60 (0.99-13.11), 2.46 (0.29-20.95), 4.81 (0.55-42.17), 21.05 (7.85-56.47)であった。ROC曲線の曲線下面積(SE)は、血糖値とHbA1cでほぼ同等であった(血糖値:0.750 (0.046) 、HbA1c: 0.732 (0.048))。 HbA1cと血糖値の糖尿病網膜症の検出力は、横断解析、縦断解析いずれもほぼ同等であったため、糖尿病の診断をHbA1cで行っても良い可能性が示唆された。
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