研究課題/領域番号 |
23790719
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
西 真理子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (70543601)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者 / 孤立 / 孤立感 / 健康 |
研究概要 |
本研究の目的は,社会的孤立を客観的な「孤立状態」と主観的な「孤立感」の2側面から捉えた上で,社会的孤立の特徴と関連要因ならびに社会的孤立状態が高齢者の健康面に及ぼす影響を検討し,社会的孤立の実態を明らかにすることである。申請者らは,平成20年度に埼玉県和光市と協働し65才以上の地域住民を対象とした質問紙調査を実施し,2年後に追跡調査を実施した。その2年後にあたる平成24年度に2回目の追跡調査を実施することを目指し,本年度は調査の実施可能性について同市と協議した。2回目追跡調査も同市と協同実施することが決定し,調査準備および体制を整えてきた。 その他,本年度は既存データの分析と2つの予備調査を実施した。予備調査の目的は,来年度調査に向けた基礎資料(質問項目検討)を得ることであった。1つ目の予備調査では,孤立予防関連の取組みを実施担当している東京都某市の職員を対象にヒアリング調査を行った。結果,孤立しがちな者に共通する特徴が把握されたほか,人的な社会資源の豊富さが孤立状態の高低に関連することが示唆された。2つ目の予備調査では,東京都某区において実施した独居高齢者調査の未回答者のうち,85歳以上であった者(他にも基準設定)21名を対象に訪問調査を行った。訪問は,当該地域の地域包括支援センター職員に同行する形式で実施した。結果,実際には同居者がいるケースが多く,身体的理由により移動能力が制限されている者も数名しか確認されなかった。本調査においては「孤立死」リスクの高い者は把握されなかったが,日中独居や二世帯住宅といった生活環境の中に「孤立感リスク」が潜在する可能性もうかがえた。 以上,社会的孤立の実態を把握していく上では,社会資源の測定方法を検討することや日中独居や二世帯住宅といった生活状況も考慮にいれる必要があることが示唆され,来年度はこれらの結果も踏まえて追跡調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,社会的孤立を客観的な「孤立状態」と,主観的な「孤立感」の2側面から捉えた上で,社会的孤立の特徴と関連要因の検討,ならびに社会的孤立が身体的,精神的,主観的健康度に及ぼす影響を検討し,社会的孤立の実態を明らかにすることである。 本研究目的達成に向けた本年度の主要な目標は,平成24度度に調査を実施出来るよう体制を整えて調査準備を進めることであった。この目標は達成され,これまでと同様に,市と協同して調査を実施することが決定した。現在,調査に向けた準備を進めており,本年度の主目標は達成されたといえる。 また,来年度の調査に含める質問項目を検討するために予備調査を実施することも本年度の計画・目標として設定していた。本研究開始当初は,居場所づくり活動利用者や見守り活動利用者など,孤立予防関連の事業に参加する高齢者へのインタビュー調査を予定していた。当初予定していた対象ではなかったが,本年度は,2つ実施することができた。一方は,実際に孤立予防関連の事業を実施担当している地域福祉コーディネーターおよび地域包括支援センターの職員を対象としたヒアリング調査であり,もう1つは,孤立リスクが高いと予測される85歳以上の独居高齢者を対象とした訪問調査であった(当該地域の地域包括支援センター職員に同行)。両予備調査とも,実施地域は東京都内であった。 既存データの分析および報告(学会や論文)することも本年度の目標ではあったが,この点は来年度の課題としたい。 以上,本年度は研究目的を達成するための準備を進めてきたが,概ね予定通りに研究計画を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,郵送式のアンケート調査を実施する(追跡調査)。調査対象は,申請者らが平成20年度に埼玉県和光市において孤立の実態把握を目的として実施した「シニア世代の安全・安心な暮らしに関する調査」に回答した2,427名のうち,平成24年7月1日時点で死亡,市外への転出,介護施設への入所を除いた者とする。調査終了後は,データを入力し,分析できるようデータクリーニングを行う。 平成25年度は,データクリーニングされたデータと既存データとのリンクを行い,縦断分析を開始する。分析結果は,適宜学会などで発表し,年度内に論文を投稿できるよう努める。また,行政および調査協力者には,調査結果をまとめたリーフレットを配布する。 以上が本研究における今後2年間の推進方策である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度(次年度)は,郵送調査を実施する。そのため,調査準備や発送に研究費を費やす予定である。 質問紙の印刷に必要な用紙やインクトナー,文具類などの消耗品や調査実施にかかる委託費に研究費を使用する予定である(調査票の印刷や製本,データ入力については,調査実施や結果分析をスムーズにするために専門会社へ委託する予定である)。また,資料収集・整理,調査票発送準備,データ整理,本研究の補助人員への謝金費等,人件費としても,研究費の使用を活用したい。 その他,研究遂行のために必要な書籍・文献複写費や,研究打合せや調査地への出張,研究成果の発表および情報収集のため国内学会出張や国際会議出張の出張費などの旅費も申請したい。 以上,研究のための情報収集,準備,実施から学会発表,結果報告資料の作成に至るまでに必要な経費を記しており,研究を遂行する上で必要かつ妥当な使用計画であると考えている。
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