研究課題
本研究の目的は,社会的孤立を客観的な「孤立状態」と主観的な「孤立感」の2側面から捉えた上で,社会的孤立の特徴と関連要因ならびに社会的孤立状態が高齢者の健康面に及ぼす影響を検討し,社会的孤立の実態を明らかにすることであった。これまで申請者らの孤立研究班は,埼玉県W市と協働して65才以上の地域住民を対象にした調査を2回実施してきた。平成20年度にベースライン調査を,平成22年度に第1回追跡調査を実施した。本研究では,同じ2年間隔となる平成24年度に第2回追跡調査を実施し,既存データと併せて縦断的分析することとした。平成23年度は,次年度に実施する調査の質問項目検討することを目的とし,既存データの分析および2つの予備調査を実施した。平成24年度は,上記の既存データ分析と予備調査から示唆されたことを踏まえて第2回追跡調査を実施し,平成25年度は,縦断的分析を行うためのデータセットを作成した。また,平成24年度調査の一部をまとめた結果報告資料を作成し,住民へのフィードバック方法を同市役所職員と協議した。結果,市役所や同市の公共施設等の窓口に陳列することに決定し,より広範囲の住民に調査を実施したことおよびその結果を報告することができる形となった。本研究成果は現時点では,主に学会で発表している段階にある。平成24年度は,孤立および孤立感が高齢者の健康に及ぼす影響を検討し,日本公衆衛生学会にて発表した。縦断的分析の結果からは「孤立していない+孤立感なし」状態と比べた場合「孤立している+孤立感なし」状態は、4年後の高次生活機能の低下と関連する可能性が示された。精神的健康面では,客観的な孤立状態よりもむしろ「孤立感あり」状態が,4年後の抑うつ症状出現の予測因子となり得ることが示唆された。研究助成の期間終了後も本研究成果の論文化に向け,さらに詳細に分析を進めていく予定である。
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