研究課題/領域番号 |
23790722
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
大村 友博 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00439035)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / オーストリア / アメリカ |
研究概要 |
法医実務における剖検死体の脳の特定マーカーの発現量から、生前の脳機能、特に生前の認知機能や運動機能を推測できれば極めて有用なツールとなり得る。そこでこれまでの申請者の研究から、脳機能障害に関与すると考えられるユビキチンリガーゼHRD1やその関連分子を中心に、それら分子の詳細な解析を行った。 平成23年度は神経芽細胞腫SH-SY5Yに6-hydroxydopamine(6-OHDA)や1-methyl-4-phrnylpyridinium(MPP+)を用いて脳機能障害モデル細胞を作製し、mRNAと蛋白質発現量を検討したところ、HRD1 が誘導されることが判明した。さらにHRD1も関与する機構である小胞体関連分解(ERAD)関連分子SEL1Lも誘導されることが判明した。そしてこれらの分子の上流にある ATF6、XBP1が変化するか否かについて検討したところ、これら分子も活性化することが判明した。これらの結果から、6-OHDA誘発細胞死は小胞体ストレスと呼ばれる細胞死を起こす機構の一つが関与していることが判明した。 また、HRD1分子を高発現させることで 6-OHDA 誘発細胞死を抑制すること、発現抑制することでその効果が低下する可能性が示唆された。これらの結果から、脳機能障害モデルにおいてユビキチンリガーゼHRD1は脳機能障害の分子マーカーとなり得る可能性が考えられた。 他方で、HRD1分子を誘導する薬物をスクリーニングした結果、抗てんかん薬ゾニサミドがその効果を有する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画した実験内容についてはほぼ予定通り実施され、成果が得られている。一部、平成23年度に計画した神経変性疾患モデル細胞の作製が遅れているが、鋭意進行中である。 平成24年度はそのモデル細胞の作製と並行し、平成24年度に計画した研究内容を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は主に実験動物を用いて、認知機能・運動機能が低下したと考えられる脳機能障害モデル動物において、脳内の各部位においてHRD1分子の発現量が低下しているか否かを定量的に評価する予定である。 一方でHRD1分子を誘導する物質が、病態疾患モデル細胞およびモデル動物に対して神経細胞保護効果を示すか否かを評価する予定である。 万が一計画どおりに研究が進まない場合は、平成24年度に予定した計画の一部を変更し、平成23年度に発展の認められた研究、および平成23年度に一部達成されていない研究項目を優先して遂行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は6-hydroxydopamine(6-OHDA)、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)を投与した運動障害モデル動物などといった、脳機能障害モデル動物を作出し、これら脳機能障害モデル動物を用いて脳内の各部位におけるHRD1分子の発現量変化と、実験動物の認知機能および運動機能との関連性について評価・検討する予定である。 他方で、HRD1分子を誘導する薬物を用いて、HRD1の発現誘導を介した神経細胞保護作用があるか、イムノブロット法やMTTアッセイ法により検討する予定であり、これら実験に必要な試薬や実験動物の購入に研究費を使用する予定である。 また、平成23年度に計画した神経変性疾患モデル細胞の作製が遅れているため、その作製とHRD1の発現量変化について検討し、ユビキチンリガーゼHRD1やその関連分子が、生前の認知機能や運動機能を推測できる有用なツールとなり得るか検討する予定である。 これら研究成果を一般学術誌に論文投稿するとともに、学術集会などで研究成果を発表する予定であり、それらに必要な投稿料や、学術集会参加に必要な旅費等に研究費を使用する予定である。
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