近年、transient receptor potential (TRP)チャネルが様々な生物種で同定され、血管においても重要な生理機能を担っていることが明らかになりつつある。TRPスーパーファミリーのうち、TRPV1とTRPV4は血管に分布し弛緩反応に関与することが知られている。我々は、免疫化学染色により、これらのチャネルの発現部位を検討したところ、TRPV1は血管平滑筋全体に、TRPV4は血管内皮細胞表面に局在していることを明らかにした。また、我々は、エタノールが心血管病の危険因子であることに注目し、TRPチャネルを介する血管弛緩反応に対するエタノールの影響を検討したところ、エタノールは神経細胞依存性のTRPV1を介する弛緩反応と内皮細胞依存性のTRPV4を介する弛緩反応を有意に抑制することを明らかにした。これらのことから、エタノールは神経細胞依存性および内皮細胞依存性の両方向からTRPチャネルを介する弛緩反応を抑制し、血流障害および、それに伴う様々な心血管病態を引き起こすことが示唆された。したがって、TRPチャネルがアルコールに起因する心血管イベントの新たな指標となり得るものと考えられる。
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