乳幼児突然死症候群(SIDS)について様々な国で疫学調査が実施されているが、どの調査でも親側のリスクファクターとして挙げられるのが喫煙である。このことから、我々は突然死にニコチンが影響していることを想定している。 今回の研究では、ニコチンを作用させた副腎髄質クロム親和細胞における遺伝子発現変化をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析し、ニコチンにより引きおこされる低酸素応答メカニズムの解明をおこなった。ニコチン刺激を与えていないものと比較し、約150程度の遺伝子において転写量の上昇または減少が確認された。現在はこれらの変動について有意なものを算出し、どのようなシグナリング経路との関連があるかについて絞りこみをおこなっている。 さらにSIDSと診断された検体より抽出したDNAについて、ニコチン受容体を含む低酸素関連遺伝子群の異常の有無をエクソン領域について検討したところ、健常者にもみられる変異のみが確認され、タンパク質機能に異常をきたすような変異はみられなかった。平成24年度はニコチンの代謝に関わる遺伝子であるCYP2A6、CYP1A1、GSTT1の多型性の出現頻度について、健常者群とSIDS群との間で比較した。表現型、遺伝子型ともに健常者群とSIDS群間で出現頻度に差は認められず、このことから日本人集団におけるニコチン代謝に関わる遺伝子群が、SIDS発症に関わる可能性は低いことが示唆された。
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