研究課題/領域番号 |
23790735
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山口 奈緒子 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (50380324)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ストレス / オキシトシン |
研究概要 |
オキシトシンは古くから、分娩時の子宮筋収縮促進、乳汁射出など生殖機能に関連した作用が知られているが、近年、脳内オキシトシンの神経伝達・調節物質としての役割が、非常に注目されるようになってきた。薬理学的手法やノックアウトマウスの解析により、脳内のオキシトシンが、ストレス応答の抑制や社会行動の制御において、重要な役割を果たすことが報告されている。しかし、これらの中枢性制御におけるオキシトシン-オキシトシン受容体システムの生物学的・神経学的基盤に関しては、未だ詳細は不明である。 そこで本年度は、急性ストレスによって誘起される脳内ストレス関連因子の発現変化において、オキシトシン受容体がどのように関与するか明らかにするため、オキシトシン受容体ノックアウト(OTRKO)マウスを用いて、拘束ストレス後の脳内ストレス関連因子の発現変化を調べた。 本研究では、雌のOTRKOおよびOTRWTマウスを用いた。卵巣摘除の14日後、暗期開始直後に拘束ストレス(1時間)を負荷した。ストレス負荷直後、麻酔下で灌流固定を行い、脳を摘出した。対照群については、拘束ストレスを負荷しないまま、ストレス群と同様の時間帯で灌流固定および脳摘出を行った。凍結切片を作製し、免疫組織化学法により、オキシトシンに対する単染色、および、コルチコトロピン放出因子とcFosに対する二重染色をそれぞれ行った。現在、ストレス応答の中枢である視床下部室傍核を中心に、発現解析をすすめている。本研究においてOTRKOマウスの結果をOTRWTと比較することによって、ストレス応答におけるオキシトシン受容体の関与について、より詳細に明らかにすることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、オキシトシン受容体ノックアウトマウスに急性ストレスを負荷し、ストレス後に摘出した脳組織を用いて各種の免疫組織化学染色を行うことを計画した。ほぼ予定通りに進めることができたが、必要匹数に若干の不足があった。不足分については、次年度に各群2匹ずつ追加する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ストレス応答や社会行動の中枢性調節におけるオキシトシンの重要性は明らかであるが、そのメカニズムを解明する上で、オキシトシン受容体(OTR)についての解析が求められる。しかし、オキシトシン受容体の検出に有効な一次抗体がないことから、これまでのオキシトシン受容体についての知見はmRNAレベルもしくはリガンド結合試験の成果に限られている。ストレス下のオキシトシン受容体の生体内動態を明らかにするにあたって、本研究ではオキシトシン受容体にyellow fluorescent protein variantを組み込んだOTR-Venusマウスを用いて受容体タンパク解析を行う予定である。私たちは既に、EGFPに対する抗体を用いることで、免疫組織化学法によってVenus(=オキシトシン受容体)を検出できることを確認している。今後は、ストレス応答におけるオキシトシン受容体の役割について明らかにするため、OTR-Venusマウスを用いて以下の解析を計画している:拘束ストレス負荷後の、(1)オキシトシン受容体の発現変化およびオキシトシン受容体含有細胞の活性化を組織学的に解析し、また、(2)受容体タンパクのinternalizationの有無を明らかにするため、細胞膜画分におけるオキシトシン受容体タンパク質発現量を生化学的に解析する。 OTR-Venusマウスを用いて、平成23年度と同様に拘束ストレス(1時間)を負荷した直後、麻酔下で灌流固定を行い、脳を摘出する。オキシトシン受容体検出のため、GFPに対する免疫組織化学染色を行う。また、別個体を用いて、同様のストレス条件を負荷した後、断頭後すぐに脳を摘出し、扁桃体および内側視索前野を切り出す。ショ糖密度勾配遠心により細胞膜画分を抽出する。抗GFP抗体を用いて、ウェスタンブロッティングを行い、オキシトシン受容体タンパクの発現レベルを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、主として免疫組織化学染色およびウェスタンブロッティングに使用する各種一次抗体(オキシトシン、CRF、バゾプレシン、GFP)、二次抗体および発色キットに使用する。その他、平成24年度の全ての実験に要する一般試薬および実験器具(ディスポーザブル器具を含む)の購入にも使用予定である。
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