研究課題/領域番号 |
23790737
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大田 秀隆 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20431869)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞老化 / テストステロン / 認知症 / SIRT1 |
研究概要 |
ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)や海馬神経細胞用いて、血管老化や血管障害を誘導する酸化ストレスに対して、老化形質がどのように影響をうけるか検討した。酸化ストレスにより血管内皮細胞および海馬神経細胞に老化形質が誘導された。またそれらの老化形質変化により、血管壁細胞老化、障害が神経細胞の老化を誘導されうるかを検討した。血管壁の老化により神経細胞の老化も亢進することがわかった。さらに各種セクレターゼ阻害薬(DAPT、L-685458)やSIRT1過剰発現ベクターを用いて、酸化ストレスに対する血管老化への影響を比較検討した。SIRT1の過剰発現により血管内皮および神経細胞の老化を抑制できることが分かった。さらにテストステロン処理により酸化ストレスで誘導された血管老化を抑制しうることも確認した。テストステロンの処理により、eNOSの発現変化や活性あるいはPAI-1の発現等を指標とすることで評価し、細胞周期制御因子であり同時に細胞老化に大きな役割を演じているp53蛋白についても評価を行い、細胞老化分子制御機構について検討を行った。その結果、SIRT1-eNOSがその制御に重要な働きを示していることが判明した。また同時に阻害実験も行い、テストステロンによるeNOSの発現上昇が重要であることがわかった。今回の結果は、すでに英文誌に報告することができた(Ota H et al.PLoS One. 2012;7(1):e29598.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テストステロンの抗細胞老化作用について、SIRT1を中心としたメカニズムを解明できた。細胞レベルでの結果をもとに、動物実験でも検討を加え、動物モデルとしては、加齢現象による認知機能障害をおこすことが知られているSAM(senescence accelerated mice)マウスを用い、血清テストステロン濃度が低下していることを見出しており、今回の研究モデルとして用いることができた。脳、特に海馬(CA1,CA3領域)についての影響を免疫組織学的検討を行うことができた。それらの結果を英文誌に報告した。研究は順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
上記結果をもとに、酸化ストレスで誘導されるさまざまな分子による血管老化抑制に関与する因子として長寿遺伝子であるSIRT1がどのような関連があるか、検討する。特にアミロイド産生経路がどのように影響をうけるか検討する。具体的には、アミロイドβ蛋白前駆物質APPやその中間代謝経路であるβ、γセクレターゼ、最終代謝物であるAICDの活性や発現やタウ蛋白のアセチル化がどのように変化するかを検討する。SIRT1活性はヒストンH3、p53蛋白の脱アセチル化およびHDAC assayにより、またその発現はウェスタンブロットにより測定する。すでに予備実験で、酸化ストレスにてアミロイド産生経路が亢進し、細胞老化誘導によりSIRT1発現が減少し、テストステロン処理でSIRT1発現が上昇する結果を得ている。更に、アミロイド産生経路活性化による細胞老化をSIRT1の過剰発現、活性化により抑制できるかを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究経費として、実験試薬、主にSIRT1化学阻害薬・活性化薬、Sirt1 siRNA、senescence-associated-βgalactosidase assay試薬やウェスタンブロットの各種抗体、測定キットとしてアミロイドβ蛋白、各種セクレターゼ測定ELISAキット、NOS活性測定キット、実験器材として細胞培養皿やチューブ、ピペットなど、実験動物として各種認知症モデルマウスの購入にあてる予定である。飼料として細胞培養用培地、マウス飼育餌が必要となる。消耗品が主であり、実験を遂行するに当たって必要不可欠な費用であり、費用配分も妥当であると考える。また各機器を使った測定にあたって、核染色液やTaqポリメレース等の試薬が必要である。
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