研究概要 |
加齢現象による認知症モデル動物に、SAM(senescence accelerated mice)マウスがいる。促進老化を示すSAMP系統と正常老化を示すSAMR系統があり、特にSAMP8マウスは早期に認知症様症状を呈する。また臨床研究より、男性ホルモンであるテストステロンの低下が認知症に関与することが示唆されている。前年度の細胞レベルでの検討に加え、SAMP8マウスに関してテストステロンの作用に関して検討を行った。雄12週齢SAMR1マウスとSAMP8マウスを使用し、血清中テストステロン濃度を測定した。テストステロンの主な産生部位である精巣のライディッヒ細胞に関して、細胞老化マーカーであるsenescence-associated β-gal assay (SA β-gal)を用いて評価した。さらに脳、特に海馬(CA1,CA3領域)について免疫組織学的検討を行った。また認知機能検査に関してはmorris water迷路試験、Open field試験を行った。結果としてはSAMP8マウスはSAMR1マウスと比較し認知機能障害を示した。更にSAMP8マウスは海馬領域の酸化ストレスが過剰にかかっていることが判明し、テストステロンにより抑制されることがわかった。またSAMP8マウスの血清テストステロン濃度がSAMR1に比較し有意に低下し、テストステロンの主な産生部位であるライディッヒ細胞に関して、SA β-gal活性が上昇していた。これらの認知機能障害はテストステロンの補充によって改善し、またその改善メカニズムとしてSirt1遺伝子が関与している可能性が示唆された。今回の結果から、SAMP8マウスの認知機能障害はテストステロン減少による酸化ストレスの亢進が大きな関与をしていることが判明した。またテストステロン補充により、認知機能改善につながる可能性がある。
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