研究課題/領域番号 |
23790743
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中下 聡子 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (00569270)
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キーワード | レビー小体型認知症 / 診断バイオマーカー |
研究概要 |
従来の汎用されている認知症の診断マーカーは主にAD(アルツハイマー型認知症)についてが多く、また使用されるマーカーも頭部MRI、脳血流シンチグラフィー、PETなどの画像検査、髄液を用いたバイオマーカーが主体となっている。 本研究では、(1)ADとの鑑別が必要でありかつ頻度が高く神経変性疾患の中でも重要な位置を占めているDLB(レビー小体型認知症)についての診断マーカー検索を標的としている点、(2)採取が簡便で臨床応用しやすい血液サンプルを診断マーカーとして検討している点、(3)DLBの血液サンプルでの診断マーカーとして3つの候補蛋白を同定しておりこれらを解析・検討を行うことで特異的なマーカーの確立が特色である。 これらの血清バイオマーカーと、髄液バイオマーカー画像所見などを組み合わせることでより診断精度があがり臨床的にも活用しやすくなることが予想される。また早期診断や病期診断を可能とすることで認知症診療の向上に寄与することが可能となる上、認知症疾患に対する医学的・社会的早期介入にも活用できることが期待される。 今年度はDLBの血清バイオマーカーの確立のため、DLBのマーカー蛋白質検索実験で判明したDLB群での上昇が有意な2つの診断マーカー候補蛋白についての検討を重ね、感度64%,特異度87%(AUC=0.823)であり、DLBの診断のバイオマーカーとなる可能性が示された.また、もう一つのマーカーも測定が可能であることを確認し、これらを組み合わせることでより疾患診断の感度・特異度を上げることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血液中の目的蛋白を市販のELISAキットで測定を行っており、今後の汎用性にも期待ができる。 二つの候補蛋白による実験で、既知のサンプルでDLB群と非疾患群では統計学的有意差を認めており、診断に有用であると考えられる。また新たに別の候補蛋白も組み合わせることで、血液バイオマーカーにしばしば認める他要因による偽陽性・偽陰性をより減らして有用な診断マーカーとしても活用が期待できる可能性を示すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は他のバイオマーカーとの組み合わせでの信頼性を確認していく。Double blindにて血清サンプルをELISA法にて測定し、診断精度の確認を行う。 縦断的な症例も蓄積中であり、そのような症例においてこれらのバイオマーカーの意義を確認していく。その中で、複数のバイオマーカーを組み合わせることがよいか、個々のマーカーが疾患の病期や重症度との関連があるかなどを見出していき、的確な診断、病期や重症度判定への有用性も検証をおこなっていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度実験に必要な試薬類購入の一部残額が発生した。この次年度への繰越金については、次年度に購入予定の市販のELISAキット、試薬、抗体と合わせて用いることとし、上記の計画を遂行するための実験を進めていく。 データベースの作成中であり、今回利用している生体試料の測定結果のみならず、臨床上や経過なども匿名性を保ちつつ利用するための設備環境の充実にあてる。このことで統計学的処理をよりスムースに行うことが可能になると考えられる。その中でも一貫として個人情報の保護のため情報管理を厳重にすべき対策を実施する。 結果の発表のため、引き続き国内外の学会への参加や論文化を予定している。
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