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2012 年度 実施状況報告書

脳内大麻による中枢性交感神経ー副腎髄質系賦活抑制作用の脳内機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 23790744
研究機関高知大学

研究代表者

清水 孝洋  高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (00363276)

キーワード脳内大麻 / エンドカンナビノイド / 2-アラキドノイルグリセロール / カンナビノイドCB受容体 / 中枢性交感神経―副腎髄質系 / グルタミン酸神経系 / 視床下部 / PVN
研究概要

ストレスによる交感神経―副腎髄質(SA)系の過剰な活性化は高血圧症、消化性潰瘍、免疫機能低下による発癌等を惹起することから、本系の中枢性制御機構の解明はそれら疾病の予防と治療に重要である。
これまでに代表者らは、脳内エンドカンナビノイド(eCB)(いわゆる脳内大麻)の2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を用い、2-AGが中枢性SA系賦活に対して二方向性の役割を有することを明らかにしてきた。すなわち、2-AGは脳内アラキドン酸前駆物質として本系賦活に対し促進性に関与する一方、脳内大麻として脳内カンナビノイドCB1受容体(いわゆる大麻受容体)を介し抑制性にも関与することを報告した。加えて、脳内大麻による抑制性作用が脳内グルタミン酸(Glu)神経系/NMDA型Glu受容体レベルで生ずる可能性を示唆してきた。本年度は、SA系の賦活中枢である視床下部の室傍核(PVN)に着目して、中枢性SA系賦活に対する脳内大麻の抑制性作用を解析した。
結果、ストレス関連ペプチドのボンベシン(BB)をPVNへ微量投与すると、中枢性にSA系賦活が惹起された。この賦活反応はリモナバント(CB1受容体遮断薬)により増強された一方、UCM707(eCB取込み阻害薬、すなわち脳内大麻の作用を増強する薬物)により抑制された。以上の成績より、SA系賦活中枢のPVNレベルにおいて、本系賦活に対する脳内大麻の抑制性作用が明らかとなり、ストレス関連疾患に対するeCBシグナル増強薬(eCB取込み阻害薬など)の有用性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

脳内大麻による中枢性SA系賦活抑制作用の作用標的が、本系の賦活中枢である視床下部のPVNへ興奮性の入力をしているGlu神経系である可能性を検討し、明らかにすることが本研究の最終目的である。現在までに、ストレス関連ペプチドのBBがPVNレベルでSA系賦活を惹起し、脳内大麻が本系賦活反応に対し抑制性に関与することを明らかにした。またGlu神経系についての検討は、BBによる中枢性SA系賦活に脳内Glu神経系/NMDA型Glu受容体が関与し、本賦活に対する脳内大麻の抑制作用が、少なくともGlu神経の後シナプスよりも上流を標的にしている事を示唆する結果を得ている。しかしながら、PVNのGlu神経系に関する検討結果については、現状報告できるレベルまでまとまっていない。
以上から、現在までの達成度を上記の様に評価した。

今後の研究の推進方策

研究方法:ウレタン麻酔下のラットを実験に用いる。ストレス関連ペプチドのBBを脳定位固定下にPVNへ微量投与し、中枢性にSA系を賦活させる。投与後、経時的に動脈血を採血し、血中のカテコールアミン量を高速液体クロマトグラフィーにより定量する事で、SA系賦活の程度を評価する。
計画1.PVNレベルでの中枢性SA系賦活に対するNMDA型Glu受容体の関与:BBのラットPVN微量投与による中枢性SA系賦活に対する、NMDA型Glu受容体遮断薬の影響を検討する。更に、NMDA型Glu受容体刺激薬のラットPVN微量投与が中枢性SA系賦活に及ぼす影響もあわせて検討する。
計画2.視床下部NMDA型Glu受容体レベルでの中枢性SA系賦活に対する脳内大麻の影響:CB1受容体遮断薬およびeCB取込み阻害薬がNMDA型Glu受容体刺激薬のラットPVN微量投与による中枢性SA系賦活に及ぼす影響を検討する。
研究遂行の課題と対策:本年度、新たな試みとしてマイクロダイアリシス法にてPVN内で遊離されたGluを回収し、定量する実験系の構築を行ったが、再現性の良い結果が得られなかった。次年度は最終年度に該当するので、PVNへの微量投与の実験系に集中し、本研究目的の達成を目指す。

次年度の研究費の使用計画

当該研究費が生じた状況:申請当初、購入を予定していた備品(レコーダー及びポンプ)について、研究室に保管されていた古いタイプを修理して使用可能にしたため、その分の研究費が浮く形となった。
平成25年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画:上述した古いタイプの修理備品については、本研究期間中に(再度)故障するリスクがあるため、それに備えて必要な費用を確保しておく。他の費用に関しては、上述した研究の遅れを取り戻すべく、消耗品(動物、投与薬物など)の購入に充て、研究推進のペースアップを図る。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Stimulatory and inhibitory roles of brain 2-arachidonoylglycerol in bombesin-induced central activation of adrenomedullary outflow in rats.2013

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Shimizu
    • 雑誌名

      Journal of Pharmacological Sciences

      巻: 121 ページ: 157-171

    • DOI

      10.1254/jphs.12208FP

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Brain phospholipase C, diacylglycerol lipase and monoacylglycerol lipase are involved in (±)-epibatidine-induced activation of central adrenomedullary outflow in rats.2012

    • 著者名/発表者名
      Takahiro Shimizu
    • 雑誌名

      European Journal of Pharmacology

      巻: 691 ページ: 93-102

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2012.07.017

    • 査読あり
  • [学会発表] ラット脳室内投与プロスタグランジンE2-グリセロールエステルは脳内プロスタノイドEP3受容体を介して中枢性交感神経系賦活を惹起する2013

    • 著者名/発表者名
      清水孝洋
    • 学会等名
      第86回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] ボンベシンのラット脳室内投与は視床下部室傍核脊髄投射性ニューロンのシクロオキシゲナーゼをSNO化する2013

    • 著者名/発表者名
      田中健二朗
    • 学会等名
      第86回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      20130321-20130323
  • [学会発表] ラット脳室内へ投与されたヘモグロビン由来ペプチドのRVD-ヘモプレッシンは脳内カンナビノイドCB1受容体を介してボンベシンによる中枢性副腎髄質系賦活を抑制する2013

    • 著者名/発表者名
      中村久美子
    • 学会等名
      第86回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      20130321-20130323

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公開日: 2014-07-24  

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