研究課題/領域番号 |
23790745
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
田中 健二朗 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (30552260)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ストレス / プロスタノイド |
研究概要 |
交感神経-副腎髄質(SA)系はストレス反応に重要な役割を果たすが、その分子的メカニズムはまだ十分明らかにされていない。本研究は当該年度において、SA系の賦活に視床下部室傍核(PVN)にて産生されたプロスタノイド(PGs)が関わっている可能性について検討した。実験にはラット(♂, 300-350g)を用いた。脊髄投射性PVNニューロンの標識: 単シナプス逆行性トレーサーFluoro-Gold (FG)を第8胸髄に注入することにより、副腎髄質を支配する脊髄の交感神経細胞に下降性に入力するPVNニューロン(脊髄投射性PVNニューロン)を標識した。ボンベシン脳室内投与および血中カテコールアミン測定: ストレス関連ペプチドであるボンベシンを脳室内投与した。ボンベシン投与後、血中アドレナリンおよびノルアドレナリン濃度の変化を高速液体クロマトグラフィを用いて測定することにより、副腎髄質の活性化を確認した。ボンベシンは1 nmol/animalで十分な反応が得られた。脊髄投射性PVNニューロンにおけるPGs関連分子の検出: FGにて標識された脊髄投射性PVNニューロンにおいてシクロオキシゲナーゼ(COX)-1, -2と、ニューロン活性化のマーカーであるFosタンパクの発現を免疫組織染色により観察した。ボンベシン投与群におけるFG標識COX-1/Fos陽性ニューロンおよびFG標識COX-2/Fos陽性ニューロンは、生理食塩水投与群に比べて有意に増加していた。以上の結果は、ストレスによるSA系賦活に関わるPGsがPVNにおいて産生されている可能性を初めて示すものである。これにより、ストレス反応におけるSA系の分子メカニズム解明に向けた研究について今後さらに進展させることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における当該年度の目的は、ストレス関連ペプチドのラット脳室内投与により活性化した視床下部室傍核(PVN)の脊髄投射性ニューロンにおいてプロスタノイド(PGs)産生関連分子の発現の有無を調べることにより、ストレスによる交感神経-副腎髄質(SA)系賦活にPVNで産生されるPGsが関わっている可能性を検討することである。現在までに、ストレス関連ペプチドであるボンベシンの脳室内投与が脊髄投射性PVNニューロンを活性化し、これらのニューロンがPGs産生の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ-1および-2を発現していることを明らかにした。これらはストレスによるSA系の賦活にPVNで産生されるPGsが貢献している可能性を示唆するものであり、当初の仮説を支持する結果が得られたことから、本研究は予定通り進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はこれまでに、ストレス関連ペプチドであるボンベシンの脳室内投与が視床下部室傍核(PVN)の脊髄投射性ニューロンを活性化し、これらのニューロンがプロスタノイド(PGs)産生の律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1および-2を発現していることを明らかにしてきた。一方近年、一酸化窒素(NO)がいくつかの酵素タンパク質のシステイン残基をニトロシル化することが明らかとなり、細胞内シグナル制御におけるNOの役割が注目されている。申請者が所属する研究室においてもこれまで、ストレス関連ペプチドの脳室内投与に伴う交感神経-副腎髄質系賦活において脳内NOによるCOXのニトロシル化が関与する可能性について、NO合成酵素(NOS)阻害薬、COX阻害薬、NO供与薬、チオール基保護薬等を用いた薬理学的手法による検討を行ってきた。そこで本研究ではさらに、ボンベシン脳室内投与後のPVNにおいてニトロシル化COXを検出することにより、SA系賦活におけるPVNのNO-COX系の関与について組織学的に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は抗neuronal NOS、抗inducible NOS、抗ニトロシル化システイン、ラット視床下部室傍核においてNOによるCOXのニトロシル化を免疫組織学的に明らかにするために必要な各種抗体および染色キット、並びにタンパク質の修飾を阻害するための前処置に用いるiNOS/nNOS阻害剤およびチオール基保護薬の購入に用いる。
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