研究課題/領域番号 |
23790747
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤原 章雄 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (70452886)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | マクロファージ / 天然化合物 / ガン |
研究概要 |
本年度は、腫瘍の増殖を抑制すると考えられるマクロファージの活性化をM2(オルタナティブ活性化)からM1(古典的活性化)にシフトするCorosolic acidならびにOnionin Aの担癌モデルマウスにおける有効性を検証した。その結果、Corosolic acid投与群およびOnonin A投与群の両方で、骨肉腫移植モデルマウスにおいて皮下腫瘍重量の減少ならびに腫瘍の肺転移の抑制が認められた。ゆえに、in vitroスクリーニングで同定したマクロファージの活性化を制御する天然化合物でのin vivoでの有効性が初めて証明された。また、Corosolic acidに関しては、皮下腫瘍に浸潤したpSTAT3(M2マーカー)陽性マクロファージの数が減少していたことから、in vivoにおいてもマクロファージのM2活性化が抑制さていた。さらに、Corosolic acid 投与群では、皮下腫瘍中のCD4陽性T細胞ならびにCD8陽性T細胞の数が増加していたことから、Corosolic acid は、マクロファージの活性化制御のみならず、その他の免疫細胞にも作用することで抗腫瘍免疫を高めている可能性が示唆された。一方、Onionin Aに関しては、in vivoにおける抗腫瘍作用のメカニズムは、現在検討中である。さらに、今年度はCorosolic acidやOnionin A以外にマクロファージの活性化状態をM2からM1にシフトさせる化合物として、Oleanolic acidならびにGarlicninを同定し、Oleanolic acidに関しては、STAT3の活性化を抑制することでマクロファージの活性化を制御することを明らかにし、その研究結果をOncology Reportにて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初計画していたCorosolic acidならびにOnionin Aの骨肉腫移植モデルマウスにおける効果の検討を行い、現在のところ良好な結果が得られていることから、1つ目のテーマであるマクロファージの活性化をM2からM1にシフトさせる天然化合物の探索に関しては予定以上のペースで計画が進んでいる。また、もう一つの研究テーマであるメタボリックシンドロームや動脈硬化の予防・治療を目的としたマクロファージの活性化をM1からM2にシフトさせる天然化合物の探索に関しても、1次スクリーニングの結果から保有する天然化合物ライブラリーの中から20種類程の候補化合物を同定しており、本テーマに関しても計画通り進んでいる。ゆえに、本研究の現在までの達成度としは、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、骨肉腫移植モデルマウスの皮下腫瘍等を用いて免疫染色やreal-time PCRを行うことで、Onionin AのマクロファージやT細胞などの免疫担当細胞に対する詳細な機能解析を行う予定である。また、マクロファージの活性化をM2からM1にシフトさせる化合物として新たに同定したGarlicninの担癌マウスでの効果について検討する。さらに、マクロファージの活性化をM1からM2にシフトさせる化合物として同定した20種程の化合物に関しては、2次スクリーニングを行うことで候補化合物の数を絞り、それらのマクロファージ活性化制御メカニズムを解析すると共に、in vivoモデルでの効果を検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究を円滑に進めるにあたって必要な細胞培養試薬・製品、組織染色用試薬・消耗品、サイトカイン・遺伝子発現解析用試薬、疾患モデル動物等の購入に使用する予定である。また、情報交換や研究成果を公表するための学会参加を計画しているため、その出張旅費として使用する予定である。さらに、研究結果の論文公表も予定しているため、投稿費用や英文校正費用も含んでいる。
|