研究課題
本研究の目的は、糖尿病(DM)に一過性脳虚血を併発した際に生じる脳梗塞悪化のメカニズムを明らかにするとともに代替医療を目指す為に、機能性食品摂取による予防・治療への有用性を解明することとした。前年度までとして、①DMラットの脳では炎症反応が惹起されており、虚血/再灌流時にはこの反応がさらに増強され、脳障害が悪化した。②霊芝菌糸体培養培地抽出物(Water-Soluble Extract from Culture Medium of Ganoderma lucidum Mycelia :WER)は、炎症性関連因子等の発現を抑制することにより脳保護効果を示した。③DMラットにおける脳障害悪化の一因として、核内に存在するhigh mobility group box-1(HMGB-1)が虚血早期に細胞外に放出され、ペナンブラに対して炎症を誘導することが想定された。そこで最終年度では、HMGB-1の関与を詳細に検討するため、HMGB-1経路におけるシグナル分子の発現を非糖尿病態(non-DM)とDM群で比較した。その結果、遊離したHMGB1の受容体であるRAGEやTLRの発現が虚血/再灌流後のDMラットの脳皮質において増加し、その下流であるERK1/2とp38のリン酸化およびNF-κBの核内移行がnon-DM群に比べて、DM群で再灌流後の早期から認められ、HMGB1-受容体相互作用後の細胞内シグナル伝達機構が亢進していることが示唆された。以上より、DM群では、虚血性脳障害の早期に神経細胞からHMGB1が放出され、種々のサイトカインの誘導と相まって炎症反応を惹起して悪循環を引き起こしていることが示唆された。即ち、細胞外HMGB1の増加は、糖尿病態における虚血性脳障害の悪化要因となり、虚血中心部に加えてペナンブラにおいて重篤な炎症反応と細胞死を引き起こすものと結論した。
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