潰瘍性大腸炎患者において、13C酪酸の注腸後代謝され呼気中に排出される13CO2の増減により病状の改善や炎症の程度を評価出来ることが報告されている。DSSマウス大腸炎の大腸細胞では、14C酪酸を用いたin vitroでの実験系で、マウス大腸炎の病態と酪酸の分解の欠如が関係していることが報告されている。しかし、13C酪酸注腸呼気試験による非侵襲的な方法での検討はされていない。そこで、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)大腸炎マウスに13C酪酸を注腸して呼気試験によるin vivoでの酪酸代謝が炎症の程度と漢方薬による炎症の改善を反映するのかどうかを検討した。 そこで、まず異なる濃度のDSSでマウスに大腸炎を惹起させ13C酪酸を注腸して呼気試験を行い酪酸の代謝変化を評価した。次に、呼気試験後解剖し、炎症程度の違いを病理組織学的観察によるスコア、大腸全長、MPO活性を指標として評価した。これらの結果から、DSSマウス大腸炎において炎症の程度が酪酸代謝と相関していることを明らかとした。 次に、トリニトロベンゼンスルホン酸 (TNBS) マウス大腸炎においても酪酸代謝により炎症の評価が可能か否かを検討し、呼気試験で大腸炎の評価が可能であることを示した。また、過敏性大腸炎モデルでは酪酸代謝に影響しないことを示した。 さらに、DSSマウス大腸炎に有効なサラゾピリンまたは漢方薬をそれぞれ経口投与し、13C酪酸を注腸して呼気試験を行いその治療効果を酪酸の代謝変化で評価出来る可能性が考えられた。 本研究で、我々はDSS大腸炎マウスにおいて13C酪酸注腸呼気試験によるin vivoでの酪酸代謝がヒトUC同様に、炎症の程度を反映することを初めて示した。さらに、13C酪酸注腸呼気試験は炎症の程度を反映するだけでなく、DSS大腸炎マウス治療薬の有効性を評価できる手法であることを明らかとした。
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