研究課題/領域番号 |
23790761
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
近藤 泰輝 東北大学, 大学病院, 助教 (70455822)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | HBV / HCC / ケモカイン / NK cell / T cell |
研究概要 |
HBV複製肝癌細胞株に発現するケモカイン関連遺伝子はHBVジェノタイプ毎に異なっていることreal-time PCR arrayにより発見した。また、HBVジェノタイプ間で統計学的有意に発現が変化するケモカインの中にCX3CL1が含まれるこを発見した。CX3CL1はHuh7とHepG2細胞で良く発現しており、Transwellを用いた遊走試験によりNK細胞、CD3陽性T細胞の遊走能が統計学的有意に異なっていることを見つけた。また、この差はCX3CL1を中和抗体にてブロックすることにより小さくなることも確認した。これらの事実から、B型肝炎ウイルス関連肝細胞癌においてCX3CL1の発現とCX3CR1発現免疫細胞が病態に深く関わっていることが疑われたため、実際のウイルス関連肝細胞癌患者より得られた組織を用いて免疫染色を施行した。結果、B型肝炎ウイルス関連肝細胞癌においてC型肝炎ウイルス関連肝細胞癌と比較してCX3CL1の発現が強く、CX3CR1発現免疫細胞浸潤も高度であった。特に、CX3CR1発現NK細胞浸潤との関連が強いことが限定的な検討で疑われた。この発見は、B型関連肝細胞癌の免疫病態にCX3CL1が深く関わっていることを示すのみならず、今後の治療応用も期待できる。今後予後や腫瘍の進展度とこの発現パターンを解析することによりバイオマーカーとしても応用可能である可能性がある。今後、活性化NK細胞移入肝がん細胞移植マウスの検討を施行することにより、CX3CL1発現がん細胞とCX3CR1発現免疫細胞との関連をさらに検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したin vitroとex vivoの検討により、HBV関連肝細胞癌よりCX3CL1が産生されることを見つけた。また、この因子が免疫細胞に与える影響について解析を行い、CX3CR1陽性T細胞、NK細胞を遊走浸潤させることも見いだした。CX3CL1の発現はin vitroではHBVジェノタイプにより発現が異なることも分かったため、HBVジェノタイプによりHBV関連肝癌細胞と免疫細胞の相互作用は異なることが想定された。また、HBVとHCVを肝がん細胞株に同時に発現するin vitroモデルを作成し検討を加えた。この系ではHBVとHCVの直接相互作用は確認されず、Virus interactionは免疫細胞を介していることが想定された。ここまでは予定通りに研究が進展しており、さらにvivoの検討などを加えていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのin vitroの検討をさらに押し進め、各種ウイルス発現肝癌細胞が免疫細胞機能にどの様な影響を及ぼすかを詳しく解析していく。特に液性因子とウイルス蛋白の相互作用について詳細な検討を加える。また、ex vivo解析も症例数を増やして解析していく。また、スーパー免疫不全マウスであるNOG miceを用いてvivoの系を樹立し免疫学的検討を加える。またウイルス蛋白発現感癌細胞株をNOGマウスに移植することにより、ヒト免疫細胞とヒトウイルス関連肝癌細胞との相互作用を解析する。この解析はin vivoイメージング解析装置を用いて施行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用研究費は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額を含んでおり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。特に、各種抗体、細胞分離磁気ビーズ等の購入に昨年度未使用予算を使用し、詳細な検討を加える予定である。
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