研究概要 |
肝がん発生の背景に肝硬変が大部分存在するが、これまで我々は肝硬変で出現するアミノ酸不均衡が免疫機構に与える影響について解析してきた。当該年度は、進行した肝硬変患者に出現するL-シスチン(L-Cys)/L-グルタミン酸(L-Glu)不均衡に注目し免疫細胞(単球)に与える影響を解析した。研究成果として、1.肝硬変患者132人の血漿アミノ酸分析結果から、Cild-Pugh grade B, Cでは有意なL-Cysの増加、L-Gluの低下を認めた。2.進行した肝硬変(C-P grade B+C : n=79)において20種類の遊離アミノ酸の中で唯一L-Cysが末梢血単球数に正の相関を認めた。3.肝硬変血漿中のTNF-αがL-Cysと有意な正の相関を認めた。in vitroにおいて我々が開発した非代償性肝硬変患者の血漿アミノ酸濃度に一致した無血清培地(Hepatology 2009)ACMを用いてL-Cys / L-GluのCD14+単球に与える影響を解析した。1.L-Cysは濃度依存性にLPS刺激に対する単球からのTNF-αの産生を増加させた。またIL-10, GM-CSFの産生もL-Cys添加により増加した。2.単球のL-Cys / L-Glu交換輸送体xCTのmRNA発現が、L-Cys添加ACMで増加した。3.LPS刺激時における単球、THP-1細胞内・外のアミノ酸濃度をHPLCで評価した。L-Cys添加ACMでは有意にLPS刺激2時間後における細胞内L-Cys, 細胞外L-Gluの増加を認めた。以上により、肝硬変で出現するL-Cys、L-Gluの不均衡はCD14+単球の機能・数にxCTを介して関与している可能性が示唆された。
|