研究概要 |
腎機能は非代償性肝硬変患者の予後を決定する最重要要素である。これまで非代償性肝硬変患者では腎機能低下に伴い血漿中L-Cystine (L-Cys)が増加し、L-Glutamate (L-Glu)が低下すること、更に全20種類のアミノ酸の中で唯一L-Cysが非代償性肝硬変の腎機能(eGFR)と負の相関関係をもつことを明らかにした。非代償性肝硬変では腸管からの細菌移行(Bacterial Translocation)により急速に腎機能が悪化することが知られている。今回、細菌刺激による免疫反応にL-Cys / L-Glu不均衡が与える影響を解析することを目的とした。非代償性肝硬変患者の血漿アミノ酸濃度に一致した無血清培地ACM(Kakazu E et al : Hepatology 2009)のL-Cysに濃度勾配をつけ、健常人・非代償性肝硬変患者から採取したCD14+単球を培養した。サイトカイン産生能、細胞内外アミノ酸濃度、細胞内グルタチオン、L-Cys / L-Glu交換輸送体(xCT)の発現を解析した。ACM中のL-Cysは濃度依存性にLPS刺激に対する単球からのTNF-alpha, IL-10の産生を増加させた。LPS刺激後の単球は強くxCTを発現しL-Cys添加ACMでは有意に単球細胞内L-Cys, 細胞外L-Gluの増加を認めた。更に細胞内の還元型・酸化型グルタチオン比はL-Cys添加ACM下で低下した。In vitroの結果に一致して、肝硬変患者(n=35)の血漿L-Cys / L-Glu比は血中TNF-alphaと有意な正の相関関係を認めた。非代償性肝硬変患者において血漿中のL-Cysの増加とL-Gluの低下はxCTを介して単球に酸化ストレスを与え、TNF-alphaをはじめとした炎症性サイトカインの過剰産生に関与していた。
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