研究課題
膵炎の成因として一部のウイルス感染などがしられているが、その関連性については十分解明されていない。近年の次世代シークエンサーによる網羅的なメタゲノム解析の出現により、新興・再興感染症の病原体の同定や新たな発症メカニズムの解明などが可能になりつつある。本研究では、膵組織から感染性病原体の同定を試みたが、解明には至っておらず、今後の解析が待たれる。また重症急性膵炎の後期死亡の原因となる感染性膵壊死は、多臓器不全や敗血症性ショックを合併し、34~40%と高い死亡率を示す。この場合の感染を引き起こす微生物は一般に腸管内の細菌であるが、その臨床的な重要性に関わらず、重症急性膵炎の研究において十分な検討はなされていない。平成25年度には、免疫の主要な構成要素であるMannose binding lectin (MBL)について、その機能障害と関連する遺伝子異常を解析した。MBLは補体のレクチン経路の認識分子であり、免疫反応の鍵となる構成要素である。これまでに血中のMBL濃度に影響するコドン54の遺伝子多型が知られている。コドン54のGG genotype(野生型)は急性膵炎群222例中153例(68.9%)に同定され、健常者479例中339例(70.8%)と同程度の頻度であった。一方、感染を合併した重症急性膵炎患者14例中では非野生型を7例(50.0%)に認め、感染を合併しなかった98例中26例(26.5%)に比べやや高率であったが、統計学的有意差を認めなかった。MBLの機能障害が急性膵炎後の感染に関与するか否かはさらに症例を蓄積して検討する必要があると考えられた。
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