研究課題/領域番号 |
23790774
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
室山 良介 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (50549459)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | microRNA / 発現調節 |
研究概要 |
肝臓で発現しているmiRNAの大半を占めるmiR-122はC型肝炎ウイルス(HCV)の複製やインターフェロン治療応答性、発癌との関連性が報告されている。その発現量は、ゲノムからの初期転写産物であるpri-miR122の転写量と相関を認めるため、平成23年度はpri-miR122の転写制御につき詳細な検討を行った。まず肝癌細胞株であるHuh7からcDNAを作成し、5', 3'-RACEにより全長pri-miR122を同定し、Northern blotにて全長であることを確認した。次に、同定された全長pri-miR122の転写開始点から上流の領域を種々の長さでReporter plasmidにクローニングし、Luciferase assayにて転写活性を評価したところ、転写開始点から上流200bpまでは高い転写活性を有することを見出した。種々の肝癌細胞株における同領域の塩基配列を調べたところ、同一の塩基配列であり、SNPにより転写活性が変化する可能性は低いと考えられた。また、同領域にはCpG islandは存在しておらず、メチル化による転写活性の変化も否定的であった。さらなる詳細な検討を行ったところ、pri-miR122の転写活性を重要な10bpの領域が見出され、同領域の配列を用いたEMSAを施行したところ、Shift bandを認めた。これは、10bpの同領域に結合する転写因子の存在を示唆するものである。同領域に結合する転写因子の報告はなく、コンピュータ解析では転写因子の予測が困難であったため、現在、転写因子の同定を行うべく研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、同定されたpri-miR122のプロモーター領域に結合する転写因子をコンピュータ解析にて予測する予定であったが、実際に行ってみるとコンピュータ解析の精度が悪く、予測が困難であったことが大きな要因である。実際、コンピュータ解析上では高スコアで結合が予測された転写因子でも、EMSAにて結合が証明されないケースが存在し、また、今回同定した10bpの転写因子の結合領域もコンピュータ解析では予測困難であった。そのため、様々な改変を行ったReporter plasmidを用いたLuciferase assayにて転写因子の結合領域を確認する方針に変更したが、これにより当初の計画よりやや遅れ気味となっている。また現段階で、pri-miR122の転写に重要な転写因子は複数存在する可能性が高く、それらを個別に検討する必要性が生じた。このことも、当初の実験計画を遅らせる要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究結果から、pri-miR122の転写に重要な未報告の転写因子の存在が示唆されるため、DNAP assayにより該当する転写因子をPull-downし、ペプチドシークエンスによる同定を試みる。該当する転写因子が同定された後は、培養細胞内で強制発現もしくはノックダウンを行い、pri-miR122およびmiR-122の発現量の変化を検討する。また、現段階で別の領域に結合する転写因子の存在も示唆されるため、そちらも同様の検討を行う。pri-miR122の転写に重要な転写因子が証明された後は、臨床検体を用いた検討に移る。具体的にはヒト肝組織中のpri-miR122と同定された転写因子の発現量との関連性や、他の臨床情報との関連性につき検討する。また、同定された転写因子の発現調節についても検討を行う。特に、同定された転写因子がmiR-122による発現調節を受けているか否かは非常に興味深いと考えられ、「同定された転写因子とmiR-122間にPositiveもしくはNegative feedback loop」が形成されているか否かにつき検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の大半の経費は、消耗品であるPCR、クローニング、トランスフェクション、Western blotなどの試薬に、一部の経費はそれらの実験を行うための器具に充てられる予定である。
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