研究課題
本研究の目的は、肝細胞癌の発癌・進展過程におけるエピジェネティック異常の意義を明らかにすることである。癌細胞にはDNAメチル化やヒストン修飾の異常が数多く蓄積しているが、これらが発癌のどの段階で生じ、また癌の進展過程にどう関与しているかはほとんどわかっていない。癌におけるエピジェネティック異常の意義の解明は肝癌発癌と進展の分子生物学的機序の理解につながるだけでなく、この異常を標的とした治療法の開発など臨床応用にも重要な意味をもつ。本研究課題で実施した結果により、以下のことが明らかとなった。1) Outer Noduleとこの内部より生じたInner NoduleのDNAメチル化解析を行った結果、多くのDNAメチル化異常はOuter Noduleの段階ですでに獲得していることが明らかとなった。このことは、DNAメチル化異常の多くが癌化の初期段階で関与していることを示唆している。2) 染色体コピー数変化を比較した結果、Outer NoduleからInner Noduleへと進展する過程で、多くの染色体異常が加わっていた。このことは、肝癌の進展過程でゲノム不安定性に伴う遺伝子異常が付加されていることを意味している。3) 一部の症例においては、染色体コピー数の変化が少なく、DNAメチル化の変化が数多く見られた。4) 遺伝子変異に関しては、Outer NoduleとInner Noduleを比較した場合、新規に獲得された変異と検出されなくなった変異の双方が認められた。このことは、癌の悪性化に寄与している変異が増加するだけでなく、悪性化の過程でSelectionも同時に進み、癌細胞のpolulationの変化が生まれていることを意味している。以上を総合すると、肝癌の進展過程において、ゲノム異常とエピゲノム異常がそれぞれ生じることで悪性化が進んでいる可能性が考えられた。
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