研究概要 |
(1)正常腸管及び炎症腸管粘膜におけるNotchリガンド分子の発現解析 1)マウス正常腸管組織におけるNotchリガンド分子のmRNA発現をRT―PCR法で解析した結果、小腸及び大腸に於いてDLL1,DLL4,JAG1の発現を認めた。免疫染色による発現解析の結果、DLL1及びDLL4はいずれも腸管上皮に発現し、絨毛・陰窩軸に沿って異なる分布を呈していた。更にこれらDLL1及びDLL4陽性細胞は、i)一部の分画はKi67陽性であり、ii)杯細胞マーカーMUC2、内分泌細胞マーカーCgA、タフト細胞マーカーDCAMKL1と共局在する細胞分画を認め、分泌型細胞形質を獲得しているものと考えられた。2)DSS腸炎モデルの炎症粘膜に於けるDLL1及びDLL4陽性細胞の動態を解析した結果、炎症・再生過程の粘膜でDLL陽性上皮細胞数が著増している事が明らかとなった。 (2)Notchリガンド発現の腸管上皮幹細胞選択的リガンド破綻による生体表現型の解析 腸管上皮幹細胞特異的遺伝子LGR5のコード領域をCreリコンビナーゼに置換したノックインマウスを用い、腸管上皮幹細胞特異的にリガンド分子を欠損させた際の生体表現型の解析から、以下の結果を得た。1)腸管上皮幹細胞特異的にDLL1及びDLL4を欠損したマウスは、タモキシフェンによる遺伝子組み換え誘導開始から10日目には幹細胞ニッチの構成に変化を認めなかった。2)一方、腸管上皮幹細胞特異的にDLL1及びDLL4及を欠損したマウスは、タモキシフェンによる遺伝子組み換え誘導開始から10日目には杯細胞・内分泌細胞・タフト細胞の3系統の細胞の著しい増加を認め、分泌型細胞への明らかな偏位を認めた。 上記の各成果は、腸管上皮幹細胞からの分化制御及び炎症粘膜における再生応答に於いて、DLL及びDLL4が機能的な役割を担っている事を示す重要な知見と考えている。
|