研究課題/領域番号 |
23790778
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
櫻井 幸 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (70547455)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 包括的解析 / pathway解析 / 宿主・ウイルス相互作用 |
研究概要 |
平成23年度の研究計画として申請者は下記の研究を行い、以下の実績を得た。(1) 蛍光蛋白発現レプリコン細胞の構築、DNAマイクロアレイ解析:1b, 2a-Yeo replicon高発現細胞、cured-1b, -2a細胞、親株Huh7細胞の各々からtotal RNAを抽出後、Gene Chip (Affymetrix)を用いたマイクロアレイ解析、およびそのデータを元に階層的クラスター解析を行った。また、発現差の見られた遺伝子間における分子間反応やパスウェイについて検討するために、マイクロアレイのデータセットと発現倍差解析の結果を組み合わせ、KEGG Pathwayデータベースに登録されているパスウェイ上への遺伝子発現変動のマッピングを試みた。その結果、1b, 2a-Yeo replicon高発現細胞では脂質関連経路の発現亢進を認めた。(2) HCV-NS4B truncated plasmidの作成、発現解析:構築した欠失NS4BプラスミドをCardifまたはRIG-I発現プラスミド共にHuh7細胞で強制発現させ、INF-βプロモーター・リポーター、およびISRE-リポータープラスミドを用いてIFN発現シグナルレベルを定量し、IFN発現系抑制の責任分子、及びそのドメイン、相互作用する宿主蛋白を解析した。NS4BのN末端側にINF-βプロモーター・リポーターの活性と関連する部位が存在することを明らかにした。(3)HCV-NS4BとCardif, RIG-Iの免疫染色:これらの蛋白の相互作用を確認するため、それぞれ局在をと小胞体膜との位置関係を解析するべく免疫蛍光染色を行ったところ、HCV-NS4BとCardifが近傍に存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の目的であるHCV増殖・培養細胞系を用いて、DNAチップ法、および次世代シーケンサー技術により、発現遺伝子の包括的解析、pathway解析を行い、HCV増殖制御に関連する宿主・ウイルス蛋白の相互作用を明らかとすることである。(1) 蛍光蛋白発現レプリコン細胞の構築、DNAマイクロアレイ解析については、予定していた通りの解析を行い、現在はその機能的な意義を解析しているところである。(2) HCV-NS4B truncated plasmidの作成、発現解析についてはNS4BのN末端側にINF-βプロモーター・リポーターの活性と関連する部位が存在することが明らかになり、目的を達成した。(3)HCV-NS4BとCardif, RIG-Iの免疫染色:これについてはHCV-NS4BとCardifが近傍に存在することを確認し、さらにHCV-NS4BとSTINGも近傍に存在することを確認し、目的を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の計画としてはHCV-NS4BとCardifのBiFC assay及びHCV増殖に関連する宿主肝細胞のmicro RNA 発現の包括的解析を行う予定である。これらによって本研究計画の目的であるHCV増殖・培養細胞系を用いて、DNAチップ法、および次世代シーケンサー技術により、発現遺伝子の包括的解析、pathway解析を行い、HCV増殖制御に関連する宿主・ウイルス蛋白の相互作用を明らかとしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の計画として下記を行う予定である。(1) HCV-NS4BとCardifのBiFC assay:生体発光共鳴エネルギー転移は生細胞を用いてタンパク質―タンパク質相互作用の時間的・空間的な変化を比較的容易に可視化できる方法である。この手法を改変したBiFC assayを用いて、申請者はHCV-NS4BとCardifあるいはHCV-NS4BとSTINGの相互作用の解析を目的に、BiFC assayを行う。(2) HCV増殖に関連する宿主肝細胞のmicro RNA 発現の包括的解析:本研究ではHCV増殖に関連する宿主肝細胞のmicro RNA (miRNA)を標的としたanti-micro RNA (antagomir)を探索し、Vitamin E、コレステロールをはじめとする化学修飾を施したantagomirを作成、それらのウイルス増殖に与える効果を検証する。ヒト肝癌Huh7細胞にHCVレプリコンRNAを恒常的に導入した細胞株(HCVレプリコン細胞)、および非導入Huh7細胞、インターフェロンによるレプリコン除去細胞から低分子量RNAをそれぞれ抽出し、904種のヒトmicroRNAを検出するDNA microarryをもちいてレプリコン発現特異的に発現が上昇ないし低下するmicroRNAを同定する。さらに、以上の解析をHCV-JFH1感染細胞株を用いて施行する。
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