LI-カドヘリンは古典的カドヘリンと構造的・機能的にも異なった特徴を有するユニークなカドヘリンである。本研究では肝内胆管癌発癌過程におけるLI-カドヘリンの役割を解析し、早期診断マーカーへの応用を目指すことを目的とした。前年度に引き続き以下の研究を進めた。 1. シェディングによる LI-カドヘリン切断部位の同定。 前年度に行ったエドマン分解法によるN末端アミノ酸配列解析に関して、ケラチン等の人為的なコンタミネーションを避けるために試薬や器具等を配列分析専用とし、再解析を行った。サンプルの高純度化やデブロッキング処理を行ったが、配列の決定が困難であった。可能性として、修飾アミノ酸の存在やタンパク質N末端の不均一化などがあげられた。今後MALDI-TOFMSを用いたN末端アミノ酸配列解析を検討している。 2. ELISAによる肝内胆管癌血清中LI-カドヘリン値の測定とその臨床病理学的意義の検討 対象は2011年から2014年までの当院において肝内胆管癌と診断された12症例であった。内訳は男性8名、女性4名、平均年齢63.8歳であった。血清LI-カドヘリン値は12症例中3症例で検出された。3症例の内訳は、男性1名、女性2名、平均年齢62.3歳、平均腫瘍径は3.0cm、TNM分類(UICC7th)III期1例、IVB期2例であった。血清LI-カドヘリン値検出症例と非検出症例の2群での比較では、検出群と非検出群の生存率(Kaplan-Meier法)の比較では、2群間に有意差はみられなかった(Log-rank検定0.594)。種々の臨床病理学的因子とのカイ2乗検定では、有意差のみられた因子はなかったが、検出例では全例進行例であり、血清LI-カドヘリン値は進行例に検出されるようである。現段階では少数例での検討であり、今後多数例での検討を行う必要がある。
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