研究課題
抗腫瘍免疫を向上させる目的で、C型慢性肝疾患患者由来DCの細胞免疫学的特徴を解明し、種々の刺激誘導法の有用性について検討した。DCの誘導は、肝細胞癌患者16例、C型慢性肝疾患患者12例、非感染者16例の末梢血単核球から接着細胞を分離しGMPグレードのGM-CSF、IL-4を含む培地中で5日間培養した。末梢血から得られた接着単核球の多くはCD14陽性の単球の特徴を示していたが、GM-CSF、IL-4刺激5日後にはCD14陰性、lin陰性、HLD-DR陽性の特徴を示す未熟DCが誘導された。得られたDCに対して、TNFα、IL-6、IL-1β、PGE2、OK-432等の免疫賦活物質を添加して更に2日間培養した際の生細胞率、成熟度、遊走能、貪食能、サイトカイン産生、異系リンパ球混合培養試験の変化を1) 非添加群(GM-CSF、IL-4のみ)、2) OK-432添加群、3) TNFα、IL-6、IL-1β添加群、4) TNFα、IL-6、IL-1β、PGE2添加群の4群において比較した。肝癌患者由来の未刺激DCでは、非感染者と比較し、生細胞率は低下していたが、DCサブセットにおけるCD11c陽性のミエロイドDCの割合、成熟度を示すCD83およびCD86の発現、遊走能に関与するCCR7の発現は増加し、FITC標識されたデキストランを用いた貪食能も高い傾向にあった。肝癌患者由来DCのOK-432添加群では、他群と比較し、CCR7の発現、Th1タイプのサイトカイン産生(IL-12、IFNγ、TNFα、RANTES、IL-1β、VEGF)、リンパ球刺激能が増加していた。以上より各種調整法の特徴が明らかとなり、OK-432添加刺激は抗原提示能、免疫賦活作用を著明に向上させたことから,C型関連肝癌患者に適する樹状細胞調整法が示され新たな免疫治療の開発に寄与することが示唆された。
3: やや遅れている
平成23年度に予定していた研究のうち,(1)樹状細胞の誘導培養法(ex vivo)の検討は,おおむね順調に進展している.(2)肝がん再発モデルにおけるケモカイン製剤の前臨床試験(in vivo)は,マウスを用いた研究は開始しているが,観察期間が十分ではなく,解析をまだ開始できていない状況である.
(2)肝がん再発モデルにおけるケモカイン製剤の前臨床試験(in vivo)を進め,抗腫瘍免疫,再発抑制効果の観察,解析を行う. (3)肝がん患者を対象とした安全性臨床試験を進めていく.2012年1月より,トランスレーショナルセンターのCPC (cell processing center)が稼働し,2012年2月より本年度に確立した誘導培養法を用いた樹状細胞をラジオ波焼灼療法施行時に経皮的にがん組織へ注入する安全性臨床試験を開始した.
肝がん再発モデルにおけるケモカイン製剤の前臨床試験(in vivo)における,抗腫瘍免疫,再生抑制効果の観察ならびに解析目的に主に使用する予定である.平成23年度に購入予定であった抗体が,研究の進捗状況の遅れにより購入の必要がなくなったため,未使用額が生じている.
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