研究課題/領域番号 |
23790783
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
葛西 宏威 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (20324189)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス / 発癌 / ヒストンの分子修飾 / 感染症 |
研究概要 |
当該年度では、HCV感染系として利用可能なヒト肝臓細胞株 Huh7株における、Coreタンパクの発現による影響を検討した。また、個体内での影響を検討するモデル系としてHCV-Coreトランスジェニックマウス系の導入セットアップを行った。Coreタンパク発現系プラスミドをHuh7細胞に発現後、36時間目において回収後、1%TritonX100で可溶化後、不可溶分画をのヌクレオゾームから酸抽出し、ウエスタンブロッティングにより評価を行った。Coreタンパク強発現群において、コアhistone群のうちH2Aのユビキチン化型タンパクの減少が確認された。この時、histone H2Aのユビキチン化を制御する分子群であるポリコーム遺伝子群のRING1およびRING2のタンパクレベルに大きな差は見い出せなかった。これらの結果から、Core タンパクの発現による早期の影響として、histone H2Aのユビキチン化型のタンパク量が標的になっている事が予想された。histone H2AはH2AX H2AZといった、ヴァリアントが存在し、それぞれ特異的な機能を果たしている。またいずれのヴァリアントもユビキチン化修飾を受け、何らかの機能制御を受けうる事が示唆されている。最近、クロマチンの安定性、DNA損傷との関連についての報告が相次いでなされている。Coreタンパクの一つの作用点としてユビキチン化型H2Aを核としたクロマチンの安定化の機構が予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
histoneの解析系および、変異体等のツールの開発については順調に進んでるという事ができる。また、coreタンパク発現の影響として、細胞株における系ながらポジティブな結果が得られた事は、計画以上の進展といえる。一方で、モデル動物を用いた解析が、予定より遅れている。この事は個体内における影響を検討する系として、Coreトランスジェニックマウスの導入を行ったが、当初の予定よりも繁殖に手間取り、個体数が系統的な解析を行う規模にいたっていなかった事に起因する。この点について、現在、繁殖についても軌道に乗っており、順調な解析が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
Core関連発癌の課程におけるユビキチン化型H2Aの役割について検討してゆく。主に、Coreトランスジェニックマウスにおける、役割に焦点を当て、加齢、DNA傷害といったモデルにおける挙動を解析してゆきたい。また、メカニズムとして、RING遺伝子型との関与、また、他のユビキチン化関連分子群(脱ユビキチン化酵素など)との相関についても検討していく。コアヒストンの分子修飾は相互に関連し合いながら機能している事があきらかとなってきている。これまでの解析において顕著な影響を検出できなかった修飾についても、再度、異なった時間軸(さらに早期の試料調整、ウイルス持続感染細胞など)、異なった実験系(トランスジェニックマウス等)において解析を行ってゆきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き、解析に重点を置き、結果から予想されうる解析点に特化して、解析のツールの購入を行う(抗体、測定キット等)。また、さらに研究成果についての公表を目指し、学術誌および学術集会においての発表を行う。これに伴い生じる諸費用にあてる。
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