研究課題/領域番号 |
23790783
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
葛西 宏威 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (20324189)
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キーワード | C型肝炎 / HCV |
研究概要 |
当該年度では、ヒト肝臓細胞株Huh7およびHCV-Core Transgenic mouse(以下CoreTg)を用いて、DNA損傷時の感受性を評価した。まず、Huh7をDNA切断活性を有する薬剤であるDoxorubicine(以下Dox)処理の影響を検討した。DNA損傷およびDNA修復のマーカーであるリン酸化ヒストンH2A.Xfociの形成が確認された。Coreタンパク発現によって、fociの数、出現のタイミングに顕著な差は検出されなかった。Doxに対する感受性を細胞増殖を指標にMTS法により検討したところ、Core発現によりDox添加後の細胞生存率が低下していた。個体レベルでの影響を検討するため、Core-TgにけるX線照射の影響を検討したところ、野生型マウスが致死に至らない照射量においてCore-Tgマウスは重度の下痢を引き起こし4ヶ月以内に試行した5個体全てが致死という結果が得られた。これらのことから、Core-TgマウスDNA損傷に対し易感受性であることがわかった。研究代表者の使用するマウスはCoreタンパクを肝臓でのみ発現しうるマウスであるにもかかわらず、全身性の表現型を示したことは興味深い。また、過年度までの解析から、HCV-Coreタンパクのヒト肝臓細胞株Huh7への強発現により、ユビキチン化ヒストンH2Aのタンパク量の低下が促されていることが確認されている。コアヒストンH2Aはほ乳類細胞において遺伝子発現を負に制御しうるヒストン修飾である。近年、コアヒストンのユビキチン化とDNA損傷時のDNA修復系における重要性が報告されている。これらの知見はHCV感染は遺伝子発現の制御、DNA損傷に対する感受性をヒストン修飾を介した制御系の混乱を誘導する可能性があることを示唆するものである。これらの分子レベルの解析系として臓器におけるクロマチン免疫沈降法の導入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞および個体レベルにおける表現型および標的遺伝子の一部についてはデータを取得しており、また、HCV感染によリ引き起こされる病態についての一つのモデルの提唱という意味では一定の水準に達したものだと考える。しかし、当初のスキームでは、現時点において分子機構および関連分子の同定が完了しており、遺伝子改変動物等の解析を準備しているいることが望ましかった。以上の理由から100%の到達とは言いがたく、上記のような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はマウス個体を用いた解析と標的・関連分子の同定を重点的に推進したいと考える。DNA損傷モデルを用いた継続した解析とともに、新たに導入に成功している臓器レベルによるクロマチン免疫沈降法を用い解析を深化させる。また、課題であったCore-Tgマウスの安定的な繁殖に成功しており一定規模のマウス頭数の維持が可能になったことを受けて、加齢によるエピジェネティクスの推移をヒストンに着目して行っていく。現在までに様々な週齢のマウスの調整ができている。修飾の標的領域、関連分子の同定もマウスの表現型解析の結果を受けて進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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