本研究はC型肝炎ウイルスの病態をCoreタンパクの機能と宿主側のヒストン修飾という観点から解析していく事を目的とした。目的の1として、Coreタンパクのヒストン修飾への影響を明らかにする事をあげ、過年度までに、ヒト細胞株およびCore-Tgマウスを用い、Core発現によりユビキチン化H2A量(以下uH2A)が減少することを見いだし、Coreタンパクの新たな標的としてuH2Aの量の制御系を明らかにした。さらに、細胞障害系でのCoreタンパクの影響を検討した所、Core発現群ではDNA障害に対する感受性が亢進していた。これを受け、当該年度では目的の次段階である分子機構と肝細胞癌発症における役割に迫るべく、Core発現およびDNA損傷によるuH2A量調節に与える影響とその機構の解析を続行した。 ヒト肝細胞株薬剤処理によりDNA障害を誘導した所、処理後15~30分の間にuH2A 量の低下が観察された。この減少は処理後4時間までに回復する。しかし、Coreタンパク発現群においては、uH2Aのレベルは対照群に比べ低下しており、回復期においてもuH2Aの低下は続いていた。個体レベルでの意義を掘り下げるために。X線照射および四塩化炭素投与による肝臓障害系を用いて個体レベルにおける影響を解析した所、X線照射後、四塩化炭素投与後早期で劇的なuH2Aの減少がみられた。uH2Aは遺伝子発現を負に制御しうる事が知られている。肝臓においてuH2Aの標的となっている事が知られている遺伝子群の発現を確認した所、DNA損傷モデルにおいて発現の亢進が確認された。これらの成果は肝細胞障害はuH2Aの減少を引き起し遺伝子の再活性化が引き起こされうること。さらに、Coreタンパク発現は障害への反応を増幅、遺伝子発現の過剰な活性化を誘導している事が予想された発癌に至る一つのモデルに成り得るのではないかと考えられた。
|