非アルコール性肝脂肪化は食事の欧米化、特に動物性脂肪の摂取により増加しているが、同時に摂取される動物性アミノ酸の肝脂肪化に与える影響についての研究は少ない。そこで動物性タンパク質に多く含まれるトリプトファンの肝脂肪化における影響を検討した。前年度までの研究で、マウスに高脂肪食およびフルクトース含有水を与えて誘導される肝脂肪化は、トリプトファンの同時摂取により増加し、そのメカニズムとしてmTOR活性増加が関与する可能性を示した。mTORはオートファジーを調節する因子であり、また、脂肪肝の発症メカニズムとして肝細胞オートファジーの抑制が重要であるとの報告がなされている。そこで次に、トリプトファンの肝細胞オートファジーに与える影響について検討を行った。mTORの阻害剤であるラパマイシンをマウスに投与すると、トリプトファンによる肝脂肪化の増悪効果が消失した。このことから、トリプトファン効果としてmTOR活性増加が重要であることが裏付けられた。マウスを絶食状態にすると、肝組織にLC3凝集が認められ、またp62の分解が認められた。このことから肝臓にオートファジーが誘導されていることが示唆される。トリプトファンは絶食によるLC3凝集とp62分解を抑制したが、その効果はラパマイシンにより減弱した。このことからトリプトファンは肝細胞のオートファジーをmTOR依存性に抑制し、オートファジーの抑制が肝脂肪化増悪のメカニズムである可能性が示唆された。
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