膵臓は成体において膵部分切除あるいはStreptozotocin(STZ)投与による膵島障害やセルレイン投与による膵炎の誘発モデルにおいて膵再生が観察されている。この成体膵における膵再生が、膵幹細胞に由来する、膵の体性幹細胞は存在せずβ細胞や外分泌細胞自身の増殖により再生する、という二つの可能性が示唆されている。膵幹細胞の存在についての見解が分かれているのは、膵幹細胞マーカーが同定されていないという問題点があることに起因していると考えられる。 これまでにEepiplakin1(Eppk1)が、膵幹細胞マーカー候補遺伝子である可能性が推測された。このEppk1は胎児期においてはPdx1陽性膵幹細胞に発現するが、その後膵管細胞、α細胞、腺房中心細胞に局在する。さらに成体膵において、Eppk1の発現は膵部分切除やセルレイン投与などによる膵障害時に再生過程で一過的に増加することを明らかにした。Eppk1が成体の膵幹細胞の指標となる可能性およびEppk1が発現した細胞から外分泌細胞や内分泌細胞などへ分化する可能性について検証をおこなうためにEppk1-CreERマウスを作出した。Eppk1-CreER;Z/EGマウスにタモキシフェン投与をおこないGFP発現パターンを解析した結果、通常状態では膵臓におけるEppk1発現細胞は、Eppk1発現細胞の膵管細胞、α細胞、腺房中心細胞のみでGFPが観察された。膵再生過程においてタモキシフェン投与したEppk1-CreER;Z/EGマウスにセルレイン投与をおこない膵炎を誘発した結果、セルレイン投与7日目においてGFP陽性Amylase陽性細胞が観察された。このことからセルレイン誘導膵炎モデルにおいてEppk1発現細胞が幹細胞でありEppk1発現細胞から膵外分泌細胞への分化転換により再生している可能性が推測された。
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