研究課題
本研究はパンテテイナーゼVanin-1が肝臓中の脂肪蓄積に直接あるいは間接的に関与するとの仮説を検証することが目的である.これまでの研究で,高脂肪食投与による食餌性脂肪肝を誘導したマウスでは脂肪肝を呈するより先にVanin-1が発現亢進することなどが分かっており,本遺伝子の肝臓内脂肪滴形成における役割を明らかにすることを目指す. まず,レプチン欠損により遺伝的肥満を呈するob/obマウスを用いて,肝臓でのVanin-1遺伝子発現について調べた.14週齢と32週齢のVanin-1 mRNAの発現量を野生型マウスと比較すると,ob/obマウスではどちらも約6倍高かったことから,食餌中の脂肪含量にかかわらず脂肪肝で発現が亢進することが分かった.次にこの肝臓組織切片を作製してin situ hybridizationを行ったところ,Vanin-1 mRNAは脂肪滴を多く有する肝細胞に多く分布していることが明らかとなった. さらにヒト肝癌由来細胞株(HuH-7)培養液中にオレイン酸を添加することにより細胞内への脂肪滴蓄積が起こるモデル系を用いて,Vanin-1 mRNAの発現量変化を測定した.その結果,0.01 mM以上の非常に低いオレイン酸濃度でPPARα依存的にVanin-1が発現亢進することが分かった.またオレイン酸以外の脂肪酸で負荷を行うと,使用したすべての脂肪酸でPPARα mRNAの発現が亢進したものの,Vanin-1 mRNAについては中鎖脂肪酸(カプリル酸,カプリン酸,ミリスチン酸),および不飽和脂肪酸(オレイン酸,リノール酸)で発現が亢進したが,長鎖脂肪酸(ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸)ではほとんど変化がなかった.一方,脂肪滴の蓄積は不飽和脂肪酸でのみ認められ,中鎖脂肪酸によるVanin-1発現亢進と脂肪滴の蓄積には関連が認められなかった.
2: おおむね順調に進展している
機能解析の部分は少し遅れているものの,発現誘導メカニズムについては当初計画以上の成果が得られ,全体としては概ね計画通り進んでいる.
今後は当初計画に記したように,機能解析に的を絞って実験を進めて行く.また現時点までの研究成果について取りまとめ,学術雑誌への投稿を行う.
先に記したとおり,研究計画のうち機能解析に関する部分がやや遅れたため,研究費の全額使用に至らなかった。今年度はこれらに順次使用予定であり,また高額備品としてサンプル保管の為の超低温フリーザを購入予定であるほか,最終年度につき学会発表および論文投稿料等への支出を見込んでいる.
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Biochem. Biophys. Res. Comm
巻: 415 ページ: 200-205
DOI:10.1016/j.bbrc.2011.10.060