研究課題
本研究はパンテテイナーゼVanin-1が肝臓中の脂肪蓄積に直接あるいは間接的に関与するとの仮説を検証することが目的である.昨年までに,Vanin-1 mRNAの発現量はレプチン欠損マウス(ob/ob)を用いた実験で食餌中の脂肪含量にかかわらず脂肪肝で亢進すること,ヒト肝癌由来細胞株(HuH-7)を用いた実験でオレイン酸添加によりPPARα依存的に発現亢進するが,脂肪酸の種類によりVanin-1の発現や脂肪滴蓄積の挙動が異なること等が分かった.本年は野生型マウス(C57Bl/6N)に脂質カロリー比80%の高脂肪食を投与し,1日後,3日後,7日後,および3日後に通常食に戻しさらに4日後の肝臓中Vanin-1 mRNA発現量を比較した.その結果,組織学的には脂肪滴の蓄積は認められなかったが,Vanin-1 mRNAの発現量は高脂肪食投与開始1日後には8倍程度に亢進すること,さらには通常食に戻すことで速やかに元の発現レベルに低下することから,高脂肪食を投与する限り高い発現量を維持することが分かった.次に野生型マウスを絶食,再給餌条件下においてVanin-1 mRNA発現量変化を調べたところ,48時間の絶食後には9倍程度に発現が亢進,再給餌の12時間後にほぼ元の発現レベルに下がることも分かった.この絶食時,体重,肝重量,脂肪組織重量,血糖値,全コレステロール値および中性脂肪値が減少,遊離脂肪酸は上昇していた.また脂質合成遺伝子群の転写因子であるSREBP-1c mRNAの発現レベルを調べたところ,絶食時には発現量が下がり,再給餌時には上がっていることも確認した.これらの結果から,絶食時に脂肪組織から血液中に放出された遊離脂肪酸が肝臓に取り込まれ,Vanin-1の発現が亢進したと考えられた.
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Biochem. Biophys. Res. Comm
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DOI:10.1016/j.bbrc.2012.12.112
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