研究課題
近年、IFNλ3(IL28B)のSNPが、C型肝炎におけるペグインターフェロン・リバビリン併用療法の新たな治療効果予測因子となることが、相次いで報告された。しかし、インターフェロンλ受容体の発現量の差については、未だ治療効果との関係が不明である。我々は、治療前肝組織中インターフェロンλ受容体mRNA発現量の程度が、治療効果と逆相関することを最近見出した。そこで今年度IL28B SNPの解析をこの症例について追加したが、同意取得が得られたものは約半数に留まり、その結果、IL28B SNPは有意な因子となったものの、インターフェロンλ受容体mRNA発現量の程度は有意な因子とはならなかった。このため、症例を大幅に追加する必要があり、今年度は予定を変更して、まずできるだけ多くの症例で同意を取得し、IL28B SNP解析を行うこととした。また、それ以外の臨床的パラメーターについても集計を行った。その結果、genotype1症例56例、genotype2症例55例でIL28B SNP解析を行い、genotype1症例でのみIL28B SNPが治療効果と有意に相関することが明らかとなり、2011年10月の日本臨床検査自動化学会第43回大会で報告を行った。また、2011年11月末に新治療薬Telaprevirが発売され、治療導入症例が増加したため、これらの症例についてもIL28B SNP、HCVコア変異解析、ISDR変異解析を行い、また、新たに副作用の貧血との関連が最近報告されたITPA SNPについても解析を行いつつある。
2: おおむね順調に進展している
前述のように進行予定が修正されたが、1年間で多くの症例を追加することができたため
引き続き多くの症例についてIL28B SNP解析を行いつつ、Telaprevir導入症例についてはITPA SNPの解析も引き続き追加していき、それぞれの患者の治療効果(無効例 vs再燃例 or 著効例)、IL28B SNP genotype (メジャーvs マイナーヘテロ or マイナーホモ)、HCVコア変異(AA70、AA91)、年齢、性別、肝線維化スコア(F0-4)、Hb値の変化などを集計し、SPSSを用いて、単変量解析ならびに多変量解析を行うことにより、各因子と治療効果との間に有意な相関が認められるかを検討する。これらにより集積した症例については、治療前肝組織中のインターフェロンλ受容体mRNA量をreal-time PCR法によって測定する。さらに、インターフェロンα受容体やインターフェロンで誘導される遺伝子群(interferon-stimulated genes:ISGs)についても同様の測定を行う。
前述の通り、本年度は予定を変更して症例の追加に重点を置いたため、結果として繰り越し金が発生したが、当初本年度に予定していたRNA調整やPCRの費用については、今後より多症例で解析が必要となるため必要となる費用も増大が見込まれ収支は整合すると予想される。この他、ITPA SNP解析の費用や各種学会・論文発表に伴う旅費・印刷代・校正費用などにも予定通り出費が予想される。また現在は病院負担となっているIL28B SNP解析やコア変異解析、genotype解析、ISDR解析などについても、当方で費用負担が生じる可能性がある。
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