本研究では、消化管におけるLRRK2の生理的役割を明らかにするため、まず初めにマウスの全消化管組織切片を用いてLRRK2の免疫組織化学染色を行った。その結果、小腸の粘膜固有層および筋層において抗LRRK2抗体に陽性反応を示す細胞が観察された。しかし、それらの細胞の同定には至っておらず、今後各種細胞マーカーを用いた蛍光二重染色によりLRRK2発現細胞の同定を行っていく予定である。 次に、神経系の培養細胞を用いてLRRK2の機能解析を行った。LRRK2を過剰発現させた培養神経細胞を用いて、LRRK2と相互作用する分子を免疫沈降法により解析した。その結果、微小管結合タンパク質の1つであるtauタンパク質がLRRK2と相互作用することが分かった。さらにこの結合は、チューブリン存在下で著しく増加されることが分かった。また、LRRK2はチューブリン存在下でtauタンパク質のThr181をリン酸化することが明らかとなった。LRRK2によるtauのリン酸化の生理的役割を明らかにするために、tauのtubulin結合能に対するLRRK2によるリン酸化の影響を解析した結果、LRRK2によってリン酸化されたtauはtubulinと結合しなかった。さらに、LRRK2を過剰発現させた細胞をレチノイン酸を用いて分化誘導させたところ、LRRK2安定発現SH-SY5Y細胞をレチノイン酸処理したところ、コントロール細胞に比して神経様突起の伸長が抑制されることが分かった。以上の結果から、LRRK2はtauをリン酸化しその微小管結合能を阻害することで、軸索伸長を抑制することが示唆された。
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