研究概要 |
【方法】健常ヒト末梢血より比重遠心法を用いて単核球分画を分離し、さらに磁気細胞分離システムを用いてCD34+細胞を分離した。肝線維化モデルは免疫不全ラット腹腔内に週2回3週間50%四塩化炭素(CCl4)を投与し作製した。その後脾臓より生理食塩水あるいは1×105 (低用量群),5×105 (中用量群),2×106 (高用量群)cells/kgの細胞量でCD34+細胞を投与した。その間もCCl4は投与を続け、CCl4投与開始後43日目に屠殺した。CD34+細胞の生体内での分化の評価を免疫組織化学を用いて行った。線維化の評価としてAzan染色, collagen-I, alpha-SMAに対する抗体を用いた免疫組織化学、リアルタイムPCRによるmRNA定量評価および血液生化学的検討を行った。細胞外基質分解系の検討ではMMP-2,-9,-13, TIMP-1についてザイモグラフィー、リアルタイムPCRを用いて検討した。肝細胞増殖活性の評価として抗Ki67抗体を用いた免疫組織化学を行った。【結果】生体内に移植したCD34+細胞は、CD31+あるいはsmooth muscle myosin heavy chain(SM1)+細胞へ分化した。Azan染色による線維化率は、非投与群と比較しCD34+細胞投与群が有意に低値であり、移植細胞数依存性に線維化の進展が阻止された。CD34+細胞移植群ではMMP-2,-9,-13の発現の亢進を認める一方、TIMP-1は抑制されていた。ザイモグラフィーではCD34+細胞移植群で強いゼラチナーゼ活性を認めた。Ki67陽性肝細胞率はCD34+細胞投与群で明らかに増加していた。CD34+細胞投与群では各種肝再生因子の発現亢進が認められた。血液生化学的検査値はCD34+細胞移植群で有意な肝機能の改善を認め、生存率はCD34+細胞投与群では全例生存した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.健常人末梢血CD34陽性細胞の培養によるEPCへの分化・増幅 (Ex vivo増幅CD34陽性細胞) EPCへの分化・増幅法は、先端医療振興財団先端医療センター血管再生研究グループ、浅原孝之教授(東海大学医学部基盤診療学系再生医療科学 教授)らのグループとの共同研究により、培養法を確立する。その機能解析は、(1)コロニーアッセイを行い、EPCとしての機能評価を行う。(2)培養前後の細胞よりRNAを抽出し、血管内皮細胞表面マーカー、分化マーカーについてFACS解析、RT-PCR、リアルタイムPCRを用いて発現レベルを解析する。2.H23年度に確立した肝硬変症動物モデルへのex vivo増幅CD34陽性細胞の投与(移植) 移植細胞数は増幅可能な細胞数に定める(H23年度の動物実験モデルの際に設定した高用量群の約10倍の移植細胞数を想定している)。その移植細胞数を1回投与あるいは2週毎に3回に分けて分割投与する[移植細胞数(想定値):2×107 cells/kg, 1回(1回投与群)あるいは3回(頻回投与群)]。投与経路は尾静脈(全身投与)より投与する。肝硬変症の線維化改善率の移植細胞数依存性か、またそれを分割投与した方がよいのか否かを検討する。対照群には、生理食塩水あるいは紫外線照射後のCD34陽性細胞を投与する。解析内容は(1)肝硬変症の改善評価としてアザン染色、及び抗I型コラーゲン,抗alpha-SMA,抗PCNA各抗体を用いた免疫組織化学による免疫局在の観察、(2)肝組織よりRNAを抽出し、リアルタイムPCR法を用いてI型コラーゲン,alpha-SMA,TGFalpha,HGF,EGF,VEGFのmRNAレベルでの定量評価、(3)肝組織をすりつぶし、リアルタイムPCR法、ゼラチンザイモグラフィーを用いてMMP-2,-9,-13のmRNAと蛋白発現、蛋白活性評価、(4)血液生化学検査
|