研究概要 |
【方法】現在当科で施行されている臨床研究「自己末梢血CD34+細胞による非代償性肝硬変患者に対する肝臓再生療法」対象患者の末梢血CD34+(EPC)細胞を採取しその一部を使用した。健常人の末梢血CD34+細胞はAllCells社より購入した。EPCはVEGF,SCF,IL-6,Flt-3 ligand,TPOを添加したStemSpan-SFEM培地にて7日間培養した。培養前後のEPCの血管再生能の評価をFACS解析、コロニーアッセイ法、リアルタイムPCR法により評価した。増幅したEPCはWistar系ラット四塩化炭素モデルに免疫抑制剤併用下に移植し(四塩化炭素は腹腔内に週2回10週間投与)移植後4週目に屠殺し解析した。肝線維化の評価をAzan染色およびI型コラーゲン、αSMA抗体に対する免疫組織化学染色にて行った。線維分解系酵素の推移をリアルタイムPCR法により評価した。肝再生の評価をPCNAに対する免疫組織化学染色にて行った。 【結果】培養前後の細胞数は健常人由来EPCが約12倍増幅したのに対し肝硬変患者由来では約8倍であった。コロニーアッセイ法では増幅後肝硬変患者と健常人のコロニー数を比較すると有意な増加を認めた。FACS解析では肝硬変患者増幅EPCにおいてVE-cadherin,KDR,Tie2の発現が、リアルタイムPCR法ではVEGF,HGF,EGF,TGFα,FGF-2,eNOS,Angiopoietin-2の発現が増幅後有意に増加していることを確認した。肝硬変患者由来増幅EPCを移植した治療群は対照群と比較し肝線維化は有意に改善し、リアルタイムPCR法ではTIMP-1の発現低下とPCNA陽性肝細胞/肝類洞内皮細胞数の有意な増加を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
1.H23年度に確立した免疫不全ラットを用いた肝硬変症動物モデルへのex vivo増幅CD34陽性細胞の投与(移植) 移植細胞数は5×10e4(低用量群),2×10e5(中用量群),1×10e6 cells/kg(高用量群)と3群設定し、投与経路は脾臓(局所投与)より投与(移植)する。対照群には、生理食塩水あるいは紫外線照射後のCD34+細胞を投与する。解析内容は、①肝硬変症の改善評価としてアザン染色および抗I型コラーゲン、抗αSMA抗体、抗PCNA抗体を用いた免疫組織化学染色、②肝組織よりRNAあるいは蛋白を抽出し、リアルタイムPCR法、ゼラチンザイモグラフィ-を用いてMMP-2,-9,-13,TIMP-1、ウエスタンブロット法を用いてMMP-13、③移植した細胞が生体内で何に分化したかの評価として、抗ヒトSM-1抗体、抗ヒトアルブミン抗体、抗ヒトケラチン19抗体、抗ヒトCD31抗体を用いた免疫組織化学染色、④血液生化学検査などを検討する。
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