研究概要 |
<1> 肺高血圧症患者におけるOCTイメージングワイヤーを用いた肺動脈病変の検討 心臓カテーテル検査を施行した肺高血圧症患者(n=79)を対象とした。特に慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者(n=22)において、OCTイメージングワイヤーにより血流を阻害していると思われる、特異的な網目状のweb像が得られた。この部分に対して経皮的肺動脈形成術を施行し、治療前後で以下の項目を検討した。(1) 自覚症状(WHO機能分類、身体活動能力指数:Mets)、(2) BNP・血清尿酸値、(3)罹患歴・治療歴、(4) 心臓カテーテル検査での血行動態(PCWP, PAP, RVEDP, RAP, CIなど) 自覚症状は、8例がWHO機能分類III,IVであったが、全員がWHOIIに改善した。治療薬については、epoprostenolの持続静注を7例で行っていたが、全例で中止し経口beraprost製剤に変更出来た。またBNPや心臓カテーテル検査での血行動態(mPAP, RAP, CI, PVR)で有意な改善が認められた。経皮的肺動脈形成術を施行した患者(n=22)と施行されていない慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者(n=39)との予後を比較した結果、経皮的肺動脈形成術を施行した患者で有意に予後良好であった。今後も引き続きOCTイメージングワイヤーを用いて肺高血圧症患者における肺動脈病変の検討を継続していく。 <2> 肺高血圧症動物モデルにおける小肺動脈病変・肺動脈主幹部病変・右心機能の検討 肺高血圧症動物モデル(低酸素誘発性肺高血圧症マウス、モノクロタリン誘発性肺高血圧症ラット)を用いて、肺動脈病変を作成し、生体内で肺動脈圧がかかった状態での小肺動脈病変の程度・肺動脈主幹部の血管径・ミラーカテーテルを用いた右心機能を比較検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに肺高血圧症患者(n=79)に対して心臓カテーテル検査並びにOCTイメージングワイヤーを施行することができた。特に慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者(n=22)においては、OCTイメージングワイヤーにより血流を阻害していると思われる、特異的な網目状のweb像が得られた。また、同部位に経皮的肺動脈形成術を施行することで、肺高血圧症が改善することも確認できた。薬物療法のみでは8名がWHO機能分類III,IVであったが、経皮的肺動脈形成術を施行することで全8例がWHOIIに改善した。治療薬については、エポプロステノールの持続静注を7例で行っていたが、全例で中止し経口ベラプロスト製剤に変更出来た。エポプロステノールを導入しても、5年生存率60%と報告されている肺高血圧症患者において、今回の結果は有意義なものであると考える。またBNPや心臓カテーテル検査での血行動態(mPAP, RAP, CI, PVR)で有意な改善が認められた。今後も引き続きOCTイメージングワイヤーを用いて肺高血圧症患者における肺動脈病変の検討を継続していく。 また、肺高血圧症動物モデルにおける小肺動脈病変・肺動脈主幹部病変・右心機能の検討も継続していく。
|