研究課題
日本での心血管病による死亡はその30.8%を占め、心不全で死亡する症例数が増加している。加齢、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、慢性呼吸不全は、自覚症状がない早期の心不全、いわゆる隠れ心不全の危険因子と考えられている。近年、高齢化、生活習慣の欧米化が進んでいること、心不全が顕在化すると治療が困難なため、自覚症状のない早期心不全の発症機序の解明が急務である。Midkine(MDK)は、細胞増殖、生存、炎症細胞浸潤などさまざまな作用を持つ成長因子であり、心不全患者の血中濃度が亢進していることが知られている。しかしながら、心臓そのものに与えるMDKの効果は明らかでなかった。本研究は、心筋培養細胞を用いて、MDKによる細胞内シグナル活性亢進の分子機構と心血管病の進展に与えるエピジェニック制御を解明することである。疾患モデル動物を用いて、加齢、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、慢性呼吸不全によって亢進するMDKを介した心-腎-肺の臓器間の相互作用を明らかにすることを目的としている。そこで、α-MHCプロモーターを用いて、α-MHC-MDKプラスミドを作成し、さらに心臓特異的MDK過剰発現マウスを作成した。心臓特異的MDK過剰発現(TG)マウスを用いて、大動脈縮窄術(TAC)による心肥大へ与える効果を検討した。TAC後、MDK発現が亢進し、TGマウスでは、野生型マウスに比較してTAC後のERK1/2, AKT, 胎児型遺伝子発現が亢進していた。また、心重量の増加、左室拡張末期径増加、左室短縮率の低下が野生型マウスに比較して優位に悪化しており、心不全が増悪していることが、明らかとなった。また、TAC後の生存率も優位に低値であった。これらの知見から、MDKは心肥大に悪影響を及ぼす重要な増悪因子であることを明らかにした。
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