研究課題/領域番号 |
23790832
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中原 健裕 群馬大学, 医学部, 医員 (00599540)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | FGF23 |
研究概要 |
慢性腎臓病(CKD)患者では心血管イベントの発症リスクが高く、心腎連関の病態解明は重要な課題である。最近までの国内外の研究においては、骨由来のリン尿中排泄促進ホルモンFGF23(Fibroblast Growth Factor 23)の血清濃度が、透析患者の独立した予後予測因子であることが明らかにされているが、血管石灰化におけるFGF23の病態生理学的な意義は不明である。そこで、本研究は、FGF23の発現調節機構および作用について解析することによって、心腎連関における役割を解明することを目的としている。まず、ヒト大動脈剖検サンプルを用いて、局所におけるFGF23やMsx2, Runx2、OPG、OPN等の石灰化関連因子の発現を、免疫染色法を用いて検討したところ、血管石灰化・非石灰化病変においてFGF23の発現を認めた。また、同部位にNotchの発現を認めた。以上よりヒト血管平滑筋細胞においてFGF23の発現が示され、その発現にNotchが関与している可能性が示唆された。次に活性型Notch (NICD)アデノウイルスをHASMCに導入し、FGF23や血管石灰化に関わる因子(Msx2, Runx2, OPN等)の発現が誘導されるかをreal-time PCR法で検討したところ、NICDによりこれらの遺伝子の発現は有意に上昇した。さらにBMP2を用いることで共同的にこれらの遺伝子の発現は上昇した。時系列を観察すると刺激二日目においてNICDとBMP2刺激によるFGF23の発現量は約15倍に増加することが示された。しかし蛋白レベルでのFGF23の発現量をFGF23ELISAにて検討したところ、吸光度では明らかな上昇を認めたものの、測定感度以下にとどまった。以上よりヒト血管平滑筋細胞においてFGF23は誘導されるものの、その発現量は少量であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)CKD患者におけるFGF23の発現部位を明らかにする。[平成23年度]:剖検によって得られたヒト大動脈を用いて、局所におけるFGF23の発現を検討した。2)NotchシグナルによるFGF23発現調節機序を解明する。[平成23年度]:活性型Notch (NICD)アデノウイルスをHASMCに導入し、FGF23の発現量をELAISA法real-time PCR法で検討した。しかし血管平滑筋細胞におけるFGF23の発現量が当初の予想より下回ったことからその後の計画の変更が必要となった。現在はFGF23の血管における役割の検討をしている。3)動物モデルを用い、NotchシグナルやFGF23が血管病変や、心筋病変の発症・進展に関与するかを明らかにする。[平成24年度]:当初の予定通り平成24年度に行うべく、手技の確立を行っている。4)心血管イベントハイリスク患者におけるFGF23の血液中濃度と心臓CTによって得られる石灰化スコアとの関連性について明らかにする。[平成23年度および24年度]:群馬大学医学部附属病院を外来受診し、心臓CT(心臓のCT撮影)を撮影する患者で本研究への参加の同意が得られたものを対象とする。心臓CTを撮影できる段階でCKDのstage1・2およびstage 3の一部が対象となり、これらの患者の血清FGF23濃度およびクレアチニン濃度と心臓 CTにより得られる石灰化スコアとの相関を検討する。現在同意を得られた症例は43症例であり、平成24年度も引き続き症例数を増す所存である。
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今後の研究の推進方策 |
1)CKD患者におけるFGF23の発現部位を明らかにする。[平成23年度]:概ね終了したと考えられる。2)NotchシグナルによるFGF23発現調節機序を解明する。[平成23年度]:現在はFGF23の血管における役割の検討を目指す。FGF23の半減期は約56分と非常に短い。よってヒトFGF23アデノウィルスベクターを培養ヒト血管平滑筋細胞に感染させ、持続的にFGF23を供給することで、血管石灰化に関わる因子(Msx2, Runx2, OPN等)の発現が誘導されるかもしくは抑制されるかを検討する予定である。3)動物モデルを用い、NotchシグナルやFGF23が血管病変や、心筋病変の発症・進展に関与するかを明らかにする。[平成24年度]:ApoEノックアウトマウスを用いた血管石灰化モデルに対してFGF23の中和抗体を用いる。また、ApoEノックアウトマウスとFGF23ノックアウトマウスを交配するもしくは、トランスジェニックマウスを用いることにより、FGF23の発現を抑制することにより血管石灰化が抑制されるかもしくは促進されるかを検討する。また、同モデルマウスにおいて、FGF23アデノウィルスを用いてFGF23の発現を促進することで血管石灰化が抑制されるかもしくは促進されるかを検討する。4)心血管イベントハイリスク患者におけるFGF23の血液中濃度と心臓CTによって得られる石灰化スコアとの関連性について明らかにする。[平成23年度および24年度]:現在参加してくださる患者数を増やしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
In vitroでは、血管平滑筋細胞や培養液購入費に研究費を使用する。また、in vitroではFGF23や石灰化関連因子を測定するELISAキットの購入や、今年度より動物実験に研究費を使用する。平成23年度から繰り越した研究費は、価格改定により平成23年度に購入できなかった試薬の購入に使用する。
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