研究協力者 |
鈴木 亨 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任准教授
相澤 健一 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教
松村 貴由 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任助教
石田 純一 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教
孫 輔卿 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特任研究員
永井 良三 自治医科大学, 学長
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研究概要 |
転写因子Kruppel-likefactor6(KLF6)の心血管系における役割はほとんど知られていない。他のKLF因子(KLF2,3,5,15等)の役割からはKLF6も同領域において重要な働きをしている事が推測され、現在までの検討にて病態刺激下での大動脈壁遺伝子発現や臓器線維化に変化をもたらす因子である事が明らかとなっている。今研究ではその知見を更に展開しwholebodyもしくはconditionalノックアウトマウスを用いた各種病態刺激への大動脈壁を始めとしたリモデリングの検討、分子生物学的手法等を通してKLF6の特に大動脈疾患における役割を明らかにし、大動脈解離及び大動脈瘤における新規病態マーカーや新規治療法の標的発見に至る事を目標とした。KLF6ヘテロノックアウトマウスは野生型に比しアンジオテンシンII負荷(2週間)による各臓器でのTGFb-1のmRNA発現量も低下、また血清中TGFb-1ではELISA上total/active両formにおいてKLF6ヘテロノックアウトマウス群での低下を認めた。刺激前では血圧は差がないもののアンジオテンシンII負荷後の血圧上昇は野生型:150-160mmHg、ヘテロノックアウト群100-120mmHgと差がありAII高容量投与による血圧や心線維化がhetero群では減弱している傾向であった。これは選択的KLF6阻害により高血圧等による心機能低下や血圧上昇を抑制し得る可能性を示していると考えられる。一方で、KLF6ヘテロノックアウトマウスはアンジオテンシンII+CaCl2負荷による大動脈解離・瘤形成が亢進しており、炎症細胞の浸潤や、壁全体でのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2の発現亢進、壁構造の破壊が認められた。これら所見は血管壁リモデリングの変化の悪化を示しておりKLF6は2面的な作用をすることが示唆された。KLF6を標的とした治療(選択的阻害薬等)では臓器特異性等につき熟慮が必要であることを示す所見と考えられる。
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